2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧
変わり種の三島作品を3本観た後ではたいへん、たいへん、オーソドックスな『班女』であった。 舞台奥に男(中村蒼)と女(橋本愛)が現れて近づき、たぶん『トリスタンとイゾルデ』が流れ、互いに取り出した畳んだ扇は影になるとまるで剃刀のように見える。 …
ぱっと見、背もたれが梯子のように長い椅子が二つ。砂浜らしいところに並んでおかれている。『真夏の死』。この椅子は海を向いているのだろうか、何か待っている感じがする。原作通りだ。しかし、この椅子と向かい合う観客席というのも、何かを待ち設けてい…
十二人の陪審員が一室に集まり、スラム育ちの16歳の少年の罪の有り無しを議論する。少年は本当に父親を刺殺したのか。 陪審員一番(ベンガル)から十二番(溝端淳平)まで、みんな別々の型のお父さんモデルみたいに見える。生真面目なお父さん(二番=堀文明…
これ、トニー賞受賞作なの?トニー賞って、思ってたよりすごくないのかもしれないね。この作品、2013年か。 民藝、アップデートできてる?追いつけてる?まずね、パンフレットの最後の「劇団民藝連名」っていう名簿は、男優が上なの?もう、開幕前に胸が塞がった…
うっ観客席で私けっこう若手、やばいぞ円、なんとかしないと。 ほぼ直線で出来た木の椅子2つ。座面は平ら、座りにくかろう。椅子から見て中央寄りにそれぞれスツールがある。一つには新聞が載っている。下手寄りにはめいめい譜面台。窓のような大きさで、四…
マイクか、ずるだね、とちょっと思う。しかし当節、マイクを使う演劇はとても多いよね。 マイクを離さない東出昌大は飛ばす。『コンフィデンスマンJP』の「ぼくちゃん」が深化した形だ。集中力も十分、交番勤務の若い警官の「非番の時」になりきっている。 …
――函(イレモノ)違い。と最初は思うのだ、特に芸者小弓(野口かおる)を筆頭に、女たちが舞台の周囲を、きいきい声の早回しで喋りあい、動き回るときには。なんだかとっても前衛で、日生劇場に合わないような気がしてしまう。 四人の女は願い事をかなえるた…
とってもいい話。原作のペン画は洒落ていて、舞台もスタイリッシュに仕上がっている。砂漠の穴の中に、一人置かれた兵士の孤独。心の変化。そして砂漠のどこかにもうひとつある敵の穴への恐怖、憎しみ。穴から覗く満天の星空もいい。照明も美しい。 まずいの…
紙にエンボス加工。浅っ!というわけで、セットの鳥居が舞台に浅めに埋め込まれているように、この田舎町の市議会議員をめぐる芝居全体が、「現実」にエンボスみたいに埋め込まれている。但し、限りなく浅く。あまりにもエンボスが浅いので、全体が不鮮明で…
ハイタウン(金持ちの街)の女社長マーガレット・ロイド(緒川たまき)は、ベイジルタウン(貧民の街)の再開発の権利を賭けて、乞食の多い貧民街へやって来る。素敵な服はぴりっと破られているけど、ちょっと浮世離れした彼女はそれほど気にしない。ベイジ…
ひとつ、とてもはっきり云えるのは、「私はこの映画に求められる観客層じゃない」ってことだ。 同時に森茉莉と妹の杏奴が(戦前かもしれない)、お涙頂戴の邦画を見に行っては互いの体を叩きながら笑ったという話も思い出す。 まず、これ映画なの?長いプロモ…
矢鱈縞っていうのか、茶や草色の縞の、狭い広いが思い思いになっている、落語にうってつけの渋い緞帳がかかってる。 ひと席おきにお客が座り、扇子をつかう男の人、女の人がちらちらし、ゆっくり又はせわしく風を送る。今日も暑い。もう9月9日、重陽の節句だ…
(これがゲルニカ) 開幕前の赤い幕を眺め、血塗られたってこのことよ、と心に呟くのであった。照明の加減で上の方が不吉に黒みがかっている。きっと、栗山民也には「ゲルニカ」のモノトーンの中から、襲い掛かってくる兇暴な赤い色が見えたんだね。 元領主…
1964年9月4日、田舎町のスプルースパインを出て、ヴァイオレット(唯月ふうか)はタルサのテレビ伝道師(畠中洋)の元へ向かう。それは長い旅だ。長距離バスグレイハウンドには、ヴァイオレットだけでなく、「それほどでもなかった人生」を打ち明ける老婦人…
泣いちゃった。といいながら、全然話に入れなかったのである。まず、舞台は山の中のタクシー会社だ。「拘束時間は出庫点呼~帰庫点呼まで」などの貼り紙や疲れてぼやけた感じの流し、ありあわせの椅子を置いたテーブル、無線室と、もう欠けているのは火力の…
マスクの下で鼻に皺を寄せる。 (ミッキーマウスやん) バンクシー展のとっつきは、本人の作業場と、黒いフードをかぶって思いに沈む男の顔のない人形が展示されているのだった。こんなに有名な無名の人見たことない。ネズミをくりぬいたステンシル型のボー…