2024-01-01から1年間の記事一覧

中野ザ・ポケット 義庵4th ACT 『ちいさき神の、作りし子ら』

耳が聴こえる者と耳が聴こえない者の恋愛、結婚、こう書くことにもう不平等が忍び込んでいる。正しくは、「音を聴く者と無音を聴く者」とするべきなのか。いやいや、「無」っていう否定的な感じが、よくないかもだな。 真の平等・公平とは何かがこの芝居では…

新宿武蔵野館 『ペナルティループ』

あー、愛だよねこれ。殺し殺される者の間の激しい愛だ。恋人唯(山下リオ)を素性の知れない男溝口(伊勢谷友介)に殺された岩森(若葉竜也)は、6月6日の朝、復讐するために野菜工場へ向かい、機会をとらえて溝口を殺害する。しかし自宅で目を覚ますと、そ…

配信 『チャッピー小林と東京ツタンカーメンズ』

チャッピー小林(小林聡美)よ!このライヴの世界線はどこだ!世界が見えねー。 逆光をあびてしずしずと歩を運んできた一人の女(チャッピー小林)は、もちろん自分の立ち位置をラクダのタイムマシンに乗ってきた女と説明はするけど、なんかまあ、説得されな…

鶯谷 東京キネマ倶楽部 No Lie-Sense

鶯谷。エロス(ホテル街)とタナトス(墓地)に挟まれたところ、とか言いたいけれど、実際には正岡子規ののどかな影とかも感じられ、ひょろ長い、不思議な街だ。だいたい、行けども行けども喫茶店がない。延々と続くホテルの数に、ほんと、びっくりする。だ…

酒田雛街道 

「来たよぉ」 山居倉庫の広々した物販部(酒田夢の倶楽)の壁一面に、きれいに飾られた素晴らしいお雛様(一体の立ち姿が70センチくらいに見える)をしり目に、親指の先くらいのお顔の、精巧な芥子雛に声をかける。ちっちゃ!ものすごい小さい。見えない。…

渋谷PARCO WHITE CINE QUINTO 『PERFECT DAYS』

「まったくね、西洋の人たちはあたしたちが、みんな盆栽好きの庭師だったらいいと思ってんのよ、」と、頭の中で大きな声を出してみる。「それと小津ね」。もちろん『東京画』(1985)には感謝してる、あれがないと、私小津映画観なかったかもだもん。 本作の主…

シアタークリエ KERACROSS 5 『骨と軽蔑』

ものすっごい切れ味、と思うのだ。刀鍛冶の打った包丁で、牡蠣をまっぷたつに切ったみたいな、ぬるくない業物の幕切れだよ。すぐそばを砲弾の飛び交う戦争(自国の戦争)、こどもが駆り出される戦争、その中で、金と権力を手にした女たちが、厳しく辛(から…

キャナルシティ劇場 『オデッサ』

そっかー。「愉快」で同時に「愛憎深く」、この矛盾した命題を充たすためには、「推理もの」だよね! しかもただ推理ものじゃつまらないから、警察官カチンスキ―(宮澤エマ)は英語で話す。被疑者コジマ(迫田孝也)と留学生スティーブ日高(柿澤勇人)は鹿…

博多座 二月花形歌舞伎 『江戸宵闇妖鉤爪』『鵜の殿様』 2024  

「あ、ちょちょちょっと待ってて、いま読んでる本佳境だから」と江戸川乱歩『人間豹』の画面の上に出た「着信」の赤と緑の丸に慌てる。いやーおもしろかった人間豹。これ舞台、しかも歌舞伎にしたくなる気持ちわかる。妖しくて怖く、そしてその妖しさと怖さ…

東京建物 Brillia HALL 『舞台 中村仲蔵 ——歌舞伎王国 下剋上異聞——』

「中村仲蔵」。破れた蛇の目傘の水を切る、びゅっという音が聞こえ、その飛沫が見える。傘を握る仲蔵の細くしろい骨ばった手、黒い着物、朱鞘(しゅざや)の刀まで頭の中で順に思い浮かべてから「…かっこいい。」っていう。顔は、そうだ、やっぱり、藤原竜也…

文京シビックホール 大ホール 『坂東玉三郎 ~お話と素踊り~』

文京シビックホールに向かうため、シャーベット状の雪をしゃくしゃく踏んで歩いていると、今日は玉三郎の地歌舞『雪』をやるのに雪が降るとは、なんてあたしは賦がいいんだろとにこにこしてくる。 この地歌舞というのは、狭いところで踊るもので(パンフレッ…

本多劇場 加藤健一事務所vol.116 『サンシャイン・ボーイズ』

BEN: You’re not happy. You’re miserable. WILLIE: I’m happy ! I just look miserable. 脚本読んだ時、ははは。と、ここすごくわらってしまった。マネージャーで甥のベン(加藤義宗)が、伯父のコメディアン、ウィリーに無聊で淋しい生活を指摘するシーン…

東急シアターオーブ ミュージカル『オペラ座の怪人 ~ケン・ヒル版~』

脳みそが、「PHAAANTOM OF THE OPERA IS THERE~」漬けになるほど聴いてきたら、全くの別物だったこの驚きよ。 あっちが年嵩の男、年若の男、そして若い娘の三角関係を描くものだとすると、こちらは全てが慎ましくベールをかぶっている。そして、「あれ」が…

TOHOシネマズ日比谷 『カラオケ行こ!』

「おもろいやん」二音ずつ下がってくる関西弁(しかも脱力)でつぶやいてしまうような映画。 黒い細身のスーツで現れる歌下手ヤクザ、狂児を演じる綾野剛が、こちらの視線を一瞬のダレも緩みも許さず吸い取ってゆく。綾野は画面上のゆるく自由な自分を、息を…

浅草公会堂 『新春浅草歌舞伎 2024』

今日の芝居は、大恩ある人のために、わが子を身代わりに差し出して死なせ、そこから決して回復できない男の話『熊谷陣屋』と、くるくると男、女、幼児、老婆に入れ替わって踊る『流星』、妹を殺された男が深く酔って、妹の奉公に上がっていたお屋敷に暴れこ…

IMM THEATER こけら落とし公演『斑鳩の王子—戯史 聖徳太子伝—』

「戦がない世の中」について、本気で考えた男、聖徳太子(明石家さんま)。先の世が見通せる千里眼をもちながら、彼は滅亡する息子山背大兄王(中尾明慶)に何も言わない。戦の火種が小さく熾り、徐々に育ち、ついに秩序を暴力でひっくり返すまでの過程に、…

明治座  日本テレビ開局七十年記念舞台 『西遊記』

鉄扇公主(中山美穂)が大きな芭蕉扇を必死で振り、孫悟空(片岡愛之助)はさらりと宙を飛び、気合一閃トンボを切る。藤原紀香はすっごくお釈迦様っぽく、金角銀角(藤本隆宏、山口馬木也)はまじめな体をコミカルに動かし、若い俳優たちは異様に身体能力高…