新国立劇場中劇場 『キンキーブーツ』

 ワンショルダーのラメの真っ赤なドレスが逆三角形をした躰に貼りつき、露わになった右肩の発達した上腕と胸筋が白く美しく、力を込めて手を動かすたびに筋肉のしなやかさに目を奪われる、という、一体私が見てるものって何。男でもなく女でもないもの、男であり女であるもの、性差を超えた美しいものを今見ているということが、とても新奇な感じで胸を打つのであった。

 靴工場の若社長チャーリー(小池徹平)は、ふと知り合ったドラァグ・クイーンのローラ(三浦春馬)の力を借り、潰れかけた工場を立て直そうと、女装した男性用のブーツで、起死回生を図る。ローラもチャーリーも父の望んでいたような息子ではなかったという忸怩たる思い、コンプレックスを抱えていて、これはそこから二人が解放されるまでを描くミュージカルだといえる。

 小池徹平の歌声はのびやかで明るく、三浦春馬のローラは、その習練の激しさが容易に想像できるくらい素晴らしかった。ローレン(ソニン)の造型が、あれ?これシンディ・ローパーじゃない?て感じにガーリーでキュートである。脇を固めるエンジェルスの踊りもすごい。お客さんもあたたかく、とても楽しい、面白いミュージカルだった。ただ、ミュージカルを知らない者として敢えて言うと、セリフ部分を歌に接近させて歌とセリフの落差を消してあり、その歌っぽいセリフがポップじゃない。歌謡曲っぽい。聞き流してしまう。全体にもっと「一生懸命さ」が薄まらないと、ポップとは言えないと思う。回を重ねればいいのかな。一幕の終りのローラに翳りが欲しい。

 最後、チャーリーはある意味ハッピーエンドを迎えるのだが、あんたはそれでいいのとちょっとローラに聞きたくなった。あれは、他人のあるがままを受け入れた姿だったのだろうか。