PARCO STAGE 『命売ります』

 とりあえず、東啓介、いま、きらっきらな時間を過ごしているのだよきみは、と、説教じみたことを言ってみよう。アングラのレジェンドや小劇場の腕利きと、たった今、舞台に立ってる。いいよね。しかも、イカの足的に味わい深い、ずれ続けるノリを表現するという難しいおまけつき。

 冒頭の東啓介をみてどうすんだ!とちょっとあせった。不用意に呼吸しちゃだめだよ、呼吸も「見せる」ものだし、ためしに町田水城が台詞言いながらどんなふうに呼吸してるか、見てごらん。体に台詞を落としてない、いつでも何かを「してみせている」、とメモしていたら、なんか突然、中盤から別人のようになり仰天した。呼吸が深くなり、相手役の台詞がよく聴けていて、喘ぎ声など自然。集中したのかなあ。なんだよーできるんじゃないかー。

 二階と一階、上下にドア(一つ一つ意匠を変えてある)が15も並び、舞台上には柩のようなテーブルがいくつか据えられている。ドアと柩との相似性、「住所」が死への道のりを決定づけている。すると羽仁夫(東啓介)は、住所不定になることで、宙ぶらりんになり、同時に死から逃げまくることになるなあ。いろんな女から愛されて「死に」きれない羽仁夫は三島そのものかもしれない。血を吸われて平穏に幸せに暮らす、という皮肉な視点は、結婚生活に三島が抱いていた恐怖心だろう。

 平田敦子が金髪のかつらを問い詰められて、筋肉だって衣装でしょと泣きながら言う。終幕、市川しんぺーは問われてやっぱり泣き崩れる。筋肉や、思想に圧迫された魂、三島って、乙女のような(乙女も演じていたのか?)誰かだったのかしらん。薫(上村海成)の「いきてね」とてもよかった。