新橋演舞場 『喜劇 有頂天団地』

 演じる女の人がみなハンサムで素晴らしい。新島襄が八重さんをハンサムといったハンサムね。きりっとしてる。

 昭和50年ごろ、郊外の住宅地に立った六軒の小さな新興住宅。ここへ越してきた主婦たちの近所づきあいの、波立つ悲喜こもごもが語られる。…って、その主婦の芯になるのが渡辺えりで、対立するのがキムラ緑子だから大型台風のよう。鷲尾真知子の高見沢夫人が和服で静々でてくるだけでわくわくする。ハンサムやん!

 波乱万丈の二幕は尻上がりに面白くなるけども、一幕がきつい。芝居が皆装置の奥にこもってて、まえへ出てこない感じである。例えばくに子(キムラ緑子)の夫伸一郎(田中美央)が妻と隣の家の秀子(渡辺えり)の意見に挟まれてどっちつかずになるシーンは、もっとはっきり演出して、観客にアピールした方がいいよ。一幕はメリハリがついてない。休憩後帰ってこなかったお客さんがいた。あと、上手側の隅に座っていたのだが、舞台が回るときセットの端の黒幕が気になった。

 キムラ緑子の芝居がとても充実していて、みんな!早くキムラ緑子捉まえて、自分の所の芝居に出さなくちゃだめよ!という気持ち。二幕はジェットコースターのように感情が上下し、身も世もなく泣き崩れる場面もあるが、どれも迫って来るのに押しつけてこない。

 渡辺えり、おもしろいがもすこしメリハリ。「素」が薄く、何かしでかしそうな予感でいっぱいなんだもん。

 姑の富江広岡由里子)はもうちょっと前に出ていい。

 前に出てこないといえば往診の女医豊田(泉関奈津子)や、新入りの筆塚夫人(田辺佳子)と京堂夫人(沖中千英乃)が前に出ずきっちり役目を果たしハンサムである。特に沖中千英乃ぴりっとしていた。