ヴィレッジプロデュース2020Series Another Style 『浦島さん』

 六曲一双の大きな屏風。二曲の屏風がその両脇に立つ。舞台上手と下手に不均衡な箱のようなものの山。絵草紙がたくさん重なっているようにも見える。舞台中央に向けて、鋭い9本の照明があたる。かっこいい。

 今日演じられるのは太宰治の書いた『お伽草紙』の中から『浦島さん』である。登場人物は三人だ。丹後水江の豪家の長男浦島(福士蒼汰)と亀(粟根まこと)、それに乙姫様(羽野晶紀)。浦島は「批評」から逃れようと竜宮城を目指す。

 コロナ下での芝居の稽古というのは、一体どうなっているのだろうか。返し稽古とか、できるのかなあ。それよりも、通しは何回くらいやったのか。と、いうのは、この芝居を推進していくのが浦島と亀の際限のない口げんか(丁々発止のやり取り)なのだが、それがもう一定のリズムで、同じメロディの繰り返しなのだ。「ヴァリエーションをつける」という場所から一番遠い。単調。みんなが一人ずつ、それぞれ自主稽古していたとしか思えない。

 粟根まことはサイクリングウェアを身に着けて登場する。両手を上にあげてV字を作ると、それが正確に左右対称だ。身体は刀のようにきちんと無理なく研がれている。その彼にして単調。なんか深い意味あるのかなあ。「単調だよ」言わない筈ないもんなあ。脚本倉持裕なのに、と首をひねる。

 福士蒼汰、今日は声が上ずっていた。まず自分の一番いい声、よく通る声をつかう。「風流」という時は「風流」を、「道楽」という時は「道楽」をイメージしないと。なんとなく意味ありげに台詞を喋っても、その台詞全体の指し示す中身がわかってないようだよ。羽野晶紀手堅い。その手堅さは、何に向けて?最後の写真で急にそわそわした。そういう話なのか。