Pカンパニー シリーズ罪と罰 CASE9  『花樟の女』

 悪評が大きすぎて、本人の実像がわかりにくくなっている作家、真杉静枝を、女だからと軽んじられ、外地うまれと蔑まれる一人の奮闘する人間としてえがく。でもまず、兄が戦死した中村地平(千賀功嗣)の台詞さー。「両親が落ち込んじゃってるんだ。」

 ここ、思わず書いたんだと思うけど、「落胆」「気落ち」じゃないと変。「落ちこむ」は現代語だよ。と、いう所から考えると、「台湾生まれと差別される」のがどの位ほんとなのかなあと疑念を持ってしまう。それと、

 静枝:私はただ、台湾で女たちがどんな目に遭っているか、書きたかっただけよ。

 とっても教条的なにおいがする。こなれてない。台詞にしないで読み取らせてほしい。

 台湾時代の真杉静枝(松本紀保)は、女であるために起こるたくさんの理不尽に、深い怒りを抱いている。この怒りが、松本紀保の中では、いまいち大きくないし深くもない。どうした。骨身に食い入るような怒りがあるから、東京までジャンプできるんじゃないの?地平に言う「だからあなたは駄目なのよ」っていうのも、怒りがふつふつ煮立ってないとね。これ、キメ台詞でしょ。キメ台詞と言えば、一番重要な台詞が台湾の言葉で、もう一つ深く耳に入ってこない。そして、台湾に帰りたいなあってしみじみ言うのが、ちょっとよくわからない。上半身と下半身がねじれているような終わり方だ。

「ここではない場所」がテーマなの?静枝はあんなに故郷を出たがっていたのにね。宇野千代(米倉紀之子)出てくるから、違いを明確にして欲しかった。「長生き」「文才(宇野千代は同時代で抜きんでていたと思う)」の差?道子(立直花子)、冒頭身体に怒りがない。水野ゆふ、福井裕子好演、千賀功嗣気が散ってた、林次樹限りなくぎりぎりセーフ。