シアタークリエ KERA CROSS第三弾 『カメレオンズ・リップ』

 カメレオン色の真実。カメレオン色って、何色なんだろ。幾重にも重なる額縁ごとに違う色が浮き出してきて、それが登場するおのおのにとっての「ほんとのこと」「うそ」なのだ。私の中ではこれはお屋敷に住む弟ルーファス(松下洸平)に収れんしていく物語だけど、姉のドナ(生駒里奈)を中心に考えたりする人もいるだろう。ツマミを動かすと色が変わる子供のボード玩具のようだね。

 まず、この芝居は全体が洗練されたコントで出来ている。面白いコントなのだが、その出来が、あまい。眼科医のモーガン(森準人)はコントの芯を掴んでずいぶんうまくやる。なんというか、品があるのだ。化粧品会社の社長を装ってやって来るビビ(シルビア・グラブ)ははみ出しそうではみ出さないぎりぎりの線、あっそこから先はやりすぎですよの内側できっちり演じる。ドナの同級生シャンプーの野口かおるは、前回観た時より格段に良くなっていて、この女がドナを狙う気持ちに無理がない。声もよくなった。けど、まだまだできる。二階でのコントのもりあがりがもひとつ。生駒里奈のドナは、初演のDVD観ちゃったのかなあ。台詞がいま、口に出しているところしかイメージできてない。台本と顔の距離が3センチしかない。もっと顔を離してセリフの全体の意味をお客に伝えてほしい。ドナとルーファスの冒頭シーン、声が丁寧でない。二人ともトーンが違う。松下洸平は声の割れをちゃんと修正してきたが、この戯曲はその上に、「コント」の完成度を要求してくる。しかも品が大事だよ。岡本健一ファーストサマーウイカの「ぬいぐるみに言わないで俺に言え」というとこは、ぶっきらぼうな愛の告白みたいなもんだと思う。岡本健一、スウィートなシーン嫌いなの出来ないの?坪倉由幸、コント巧くなって損になること一つもないのでは。セットわかりにくい。音楽多すぎ。