東京建物ブリリアホール 岩井秀人(WARE)プロデュース『いきなり本読み!in 東京建物 Brillia HALL』

 戯曲を黙って一人で読む。ああ、これ、こんな話なんだな、はいはいと思う。面白いシーンに笑ったりする。つまらないシーンを残念だなと思う。光線は天から降り風はそよそよ、世はなべてこともなし。で、他人が読みあわせるのを聴く。すると、中に、圧倒的に言葉を立体化できる人というのがいて、光は逆光となって台詞を照らし出し、雷鳴轟いて雨がざぁざぁ降り、世界が不穏に光ってくる。そんな人が4人いて台詞を読み上げたらどうなるか。て感じかな。でも今日は、役者を上回って戯曲(上田誠『来てけつかるべき新世界』)が面白すぎた。演出の岩井秀人が、同じシーンを配役を入れ替え2回やるが、「早く先に行こうぜ!」「ていうかもう立とう(立稽古しようの意)ぜ!」とおもっちゃったよ。

 スチール製の横長の折りたたみ机が5つ、折りたたみ椅子が5つ。それぞれの机の上にスタンドつきのマイクとあと小さいカメラか何かがセットされている。譜面台にも見える台本をのせる台。法被を着た岩井秀人が出て来て演出の岩井ですという。演出するのか。池谷のぶえ藤井隆水川あさみ荒川良々が登場。稽古着の体(てい)で来てくださいと言われているらしく、池谷のぶえは本当に三本ラインの黒の稽古着上下。岩井がどんな風に役を入れ替えても皆平然とこなし、「口の中が腫れた感じで」という指示も自分で思ったようにやってゆく。床屋のおじさんの荒川良々、犬を撫でながら笑うラーメン屋水川あさみ(1回目)、健気な串カツ屋の少女の藤井隆、AIの母(エフェクトいる?)池谷のぶえがよかった。

 演出がほめても(岩井秀人!誉めてばっかじゃん)誰もうれしがったりせず、淡々としている。日頃どんだけ誉められているのか。「おだて」と「誉め」の見極めがついてんだろか。