東急シアターオーブ ミュージカル『マチルダ』

世の中にうすーく広がる、「こどもってやっかい」という空気。主人公マチルダ(三上野乃花)は、その、こどもを覆う気配(世界中の子供が、実はそれに気が付いている)と戦う。

 マチルダを「ぼうず」と呼び、厄介者の最低な奴と扱う父ミスター・ワームウッド(斎藤司)、女なら見える価値=外見にこだわれと言い放つ母ミセス・ワームウッド(霧矢大夢)、そしてその厄介者扱いの極みが、学校の校長ミス・トランチブル(木村達成)である。彼女は子供を憎み、自分の望む形に恐怖を使って仕上げようとする。このさー、ハンマー投げ元チャンピオンの先生の造形——衣装がすごい。両肩に盛り上がるギャザーの入ったふくらんだ袖、広い胸を際立たせる幅広のベルト、スカートの下にはひょろひょろの足がのぞく。これ、もう、「アーマー」でしょ。木村、着こなせてない。手足の動きがどうしたら一番映えるか考える。それは甲冑でも同じ。マチルダの出産シーンの医師(酒井大)の声がくすんでいた。ノリも今一つ。

 マチルダを励ますミス・ハニー(咲妃みゆ)、劇場とのサイズ感がぴっとあっていたが、「やさしい娘」の後ろに隠れちゃダメ、「やさしい娘」より咲妃みゆの個性が大きくないと、「娘役」から出るのが大変になる。

「むかつく世界に」という歌のくだりで、観に来ている、観に来ていない現在のこどもの、マチルダみたいなこれからの戦いを思って、泣きました。セットの積み木、その中に色とりどりに下がるMatildaの文字が可愛くて楽しい。なんか、超能力唐突だった。ぎりぎり。斎藤のアフタートークでのマイクの司会ぶりは堂に入っていたが、本篇で弱い。リラックスしてない。落ち着いて声を大きく出し、がんがん行ってほしい。三上野乃花、ハート強いね。心が強いのは、お屋敷と違って誰にも盗られない財産です。