角川シネマ有楽町 『バビロン』+『Dread Beat and Blood/ダブ・ポエット リントン・クウェシ・ジョンスン』

 …2回見ちゃったよ。1回目は予備知識なく見たから何が何だかわからなかった。トラックで運ぶあの大きな箱は何?レゲエのバトルって?結局この人たち、チームなの?ジャーって何?

 ようやっと私に伝わったのは、恐ろしいほどとげとげしい景色——砂利、泥濘、瓦礫の灰色に包まれたロンドン――に肌を刺し貫かれながら、表面は陽気にふるまう西インド諸島(ジャマイカ?)の移民の若い人たちの暗い物語だ。家族とはぐれ、職を失い、恋人とは別れたも同然のブルー(ブリンズリー・フォード)にはもう行き場がない。縋りつく音楽の聖域にも、警察の槌が迫る。

 こう書くと『さらば青春の光』に似ているような気がし、あの時追い詰められていったジミーが、ただ変数でブルーに変わったようにも見える。けどそれはちょっと違う。家族があり、職を持ち、恋人がいても、バビロン――ロンドン――の黒人たちは絶望しているのだ。だからブルーはあんなに簡単に仕事をやめる。一見仲間と楽しくやってるけれど。捕囚のように囲われて閉じ込められ、すぐに帰れるように思っていた故郷は遠い、見知らぬ土地だ。差別は激しく厳しい。バビロンのルールは耐えかねるほど荒涼としているよね。

 トラックで運んで会場に持ち込んでいる大きいハコは「サウンドシステム」と呼ばれるステレオだった。DJがサウンドシステムで音楽をかけあって歌い、レゲエの出来をオーディエンスの前で競うのがどうやらバトル(あやふや!)、一団の人々は「クルー」であり、ジャーはエホヴァの神のこと。

 補助線として同じ監督のドキュメンタリーが添えられていて、ダブ詩人が登場する。この二本でようやく当時の全体像がつかめる。これ、誰に向けた映画だったのかな。たぶん、私とか対象外だったかも。レゲエ知ってる人じゃないとわからない。普遍性に欠けてる。なんかもう、不親切な映画ではあるよね。理解が進まないもん。スティーヴ・マックィーンの『スモール・アックス』観ていたから、なんとか朧げについてゆけました。