明治座  日本テレビ開局七十年記念舞台 『西遊記』

鉄扇公主中山美穂)が大きな芭蕉扇を必死で振り、孫悟空片岡愛之助)はさらりと宙を飛び、気合一閃トンボを切る。藤原紀香はすっごくお釈迦様っぽく、金角銀角(藤本隆宏山口馬木也)はまじめな体をコミカルに動かし、若い俳優たちは異様に身体能力高い。牛魔王松平健)にはビー玉が転がっていく勾配の下みたいに自然と視線が行く。これさ、1978年版のテレビより、ゴージャスじゃないかと思ってもみる。(1978年、中国ロケに仰天してたよねー。)でもあの画期的だった1978年版はさ、しょぼい部分もあったけど、「おもしろかった」。こーれーさー、面白い?どうなの?かっちり糊付けされたように社会が安定していた45年前、プロットは立てやすかったであろう。マキノノゾミは動揺する現代を映す筋立てに、戦のない国を作ろうとする牛魔王を「迷妄」と切り捨てる。あら?そうなのかい?わたしつねづね思ってるんだけど、会社とかってさ、設立のゆくたてとかその時の理念とかすごく大事でしょ。会社のその時々の決断て、理念にとても影響されるやん。戦のない国、どこがわるい。マキノノゾミは、こうした理念の最前線で矢面に立って「消費されていく」「学校の先生」にはなりたくなかったのかもしれん。とすると牛魔王に「妄念」を吹き込む鉄扇公主とはだれか、マキノノゾミ、結構な悪意を底に秘めているのか。

 片岡愛之助は口跡がはっきりと聞き取りやすく、良い。しかし、ビー玉の勾配を引き寄せるには、もっとテンション高く、軽く演じることが必要。金角銀角が悟空を瓢に引き込むとき、「悟空孫」「おう」、「空悟孫」「おう」っていうやりとりないんだね、三度もあるからめんどくさい?虎力大仙(小宮璃央)鹿力大仙(押田岳)羊力大仙(桜庭大翔)、滑舌悪いよ、前半ね。玉帝(曽田陵介)、ヤンキーみたいだけどいいの?姿勢も悪いけどなー。

日テレ70周年なんだし、ちゃんと神田伯山実物呼んできなよ。ナレーションだけじゃ、迫力ない。