本多劇場 加藤健一事務所vol.116 『サンシャイン・ボーイズ』

BEN: You’re not happy. You’re miserable.

WILLIE: I’m happy ! I just look miserable.

 脚本読んだ時、ははは。と、ここすごくわらってしまった。マネージャーで甥のベン(加藤義宗)が、伯父のコメディアン、ウィリーに無聊で淋しい生活を指摘するシーンなんだけど、しんとして考えると、『サンシャイン・ボーイズ』って、happyとmiserableについての芝居かなあ。ボードヴィルの一時代を築いたウィリー(加藤健一)とアル(佐藤B作)は、その時分、売れてハッピーだったのかもしれないし、たがいにいらいらしてミゼラブルだったのかもしれない。コンビ別れだって、年を取ることだって、一人ぼっちも、ひょっとしたら死も、ミゼラブルの中にハッピーを、ハッピーの中にミゼラブルを蔵しているのでは。

 加藤健一事務所版の『サンシャイン・ボーイズ』は、「時」を前面に押し出す。うねりながら流れていく『時』、あらゆる人に同時に流れ、パラレルであるのに、ある人の中では悲惨が勝ち、別の人の中では幸福な「時」。可笑しいことも悲しいこともすべてが流れる。終始イライラしているウィリーと、年老いることを受け入れているアルに、「悲惨で幸福」な結末が待つ。ここが、かなしく、笑えて、不思議。禍福が互い違いに訪れることになっている、この世界で、いわく言い難い「同時」にぽっちり等分な幸せと不幸せが並列する。なんかもう、笑っていいのか泣いていいのか、いい話だよね。演出は流れを重要視して句読点を打たない。

 打とうぜ?これコメディやん?

 可笑しいシーンがたくさんあるのに、立ち止まるのは往年のコメディ「おはいり」あるいは「どうぞ」の一か所だけで、あとはサラサラだ。こんな私でも、「ほほー」と5行に1,2回は読むのを休むくらい感心のあまり眼が止まるのに、可笑しい台詞がなんだかもったいなかった。皆好演、だけど、こっちは滋味ある表情見逃さないように必死だった。加藤義宗は、二人の老人を補助する脇役、昔よりすごくよくなってる。でも台詞の受けが全部同じ調子になりそう、気を付けて。