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シアターコクーン『シダの群れ 港の女歌手編』

窓の外に、抜けるような青い空が広がっている。ここは港の見えるクラブ、上手には酒を出すバーカウンター、フロアに丸テーブルが三つしつらえられている。吹き抜けのドーム型の建物で、二階部分に内側に突き出た廊下が回っている。上手手前に控室と裏口に通じるドア、二階に上がる階段がある。しっかり作られたセットの、天井を見上げると、大きな手で伏せこまれてしまったように感じる。まるで、伏せ籠の下にいるみたいだ。

 歌手のジーナ(小泉今日子)の声が、下手の奥の舞台、幕の後ろから聞こえてくる。

 志波崎組を抜け、失踪していた森本(阿部サダヲ)が、このクラブへやってきた。森本は、クラブを経営する都築組のために一働きすることになる。若頭の結城(小林薫)はジーナとわけありだったが、今はなぜかジーナをサンフランシスコのクラブへ送り出そうとしている。それは敵対する渡田部組組長の愛人にさせたくないという思惑と、世界へ出たいジーナの夢をかなえてやりたいという愛情からだと、劇中では説明されるのだが、どの人物の行動をとっても、「なぜか」と一言疑問をさしはさみたくなる。なぜか戻ってくる、なぜか銃を出す、なぜか歌う。額面通りに受け取れん。あてにならないことばっかり。

 あやふやな世界で、あやふやな感情を持つ人々が、伏せ籠の下に押し込められ、白黒をつけあう。一つの行動をとるまで、試され続ける。

小泉今日子、爪の先まで自己コントロールが効いている。どうして大アイドルだったのかやっとわかったような気がした。濃い青のブラウスに、髪の色がよく映えていた。ハイヒールが(ルブタン?)ひらっと裏返ってきれい。アキラ(佐藤銀平)、タツ(足立理)、つかいっぱしりの二人が生き生きしていた。