配信 『チャッピー小林と東京ツタンカーメンズ』

チャッピー小林(小林聡美)よ!このライヴの世界線はどこだ!世界が見えねー。

 逆光をあびてしずしずと歩を運んできた一人の女(チャッピー小林)は、もちろん自分の立ち位置をラクダのタイムマシンに乗ってきた女と説明はするけど、なんかまあ、説得されない。ライヴに登場する曲が、どれもこれも、ほとんど全然知らない曲だということも、影響しているかもしれない。昭和世代の私だっても、「ヘドバとダビデ」をかろうじて覚えているくらいだ。よくいうと、どれもこれも新鮮に、「知らない」。そしてどの曲も考えて選ばれていて、いい歌ばかりだ。チャッピー小林は堂々としてる。落ち着いてる。でも、「たのしんでください」を「おたのしんでください」と言い間違えるくらいには浮足立ってる。そして、「たのしんでください」と言い直すくらいにライヴに馴染んでる。ここがなー。不安定。『若いってすばらしい』を歌っても、ハラハラして楽しめない。繊細にキャラを作り上げてきたアベ・サディー(阿部サダヲ)とデュエット(きちんとはもっている!)を淡々とやり遂げ、後半に入るにつれて調子は上がる。「傘もささずに僕たちは…」(『黄昏のビギン』)とうたうと、トランペット(河原真彩)も前半よりもよく鳴って、「小刻みに震えてた」はよかった。「初めてのキス」のくだりも素晴らしい。花丸。でも、全体にキャラも歌も線が繊い。各地を回ってあと100回くらい歌わないとダメだねえ。どの歌も、背面飛びで、すれすれにバーをクリアしてる。無難。でもそつのない歌なんかつまんないよ。中休みで衣装替えするとき、演奏があんまり段取りじゃない?ギターソロもあってよかったのにね。

ブルーライト・ヨコハマ』、『お祭りマンボ』はよく歌いこまれていて、小林聡美がこの歌を好きなのが伝わった。ファルセットも頑張っている。急にライヴがひかひかと輝く。衣装はかわいく、とにかく小林聡美は威風堂々だ。けどさ、器用にこなしてもダメ、みんなが知ってる王道の曲で、どーんと勝負に来い。そこが欠けてる。第一、カラオケで練習できないんじゃ話にならんやん。