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M&Oplaysプロデュース 『虹とマーブル』

 「金を儲ける」。

 だあれも否定しない。金はいくらあっても邪魔にならない、なんていう。「もっと」という。誰もが単純に儲けたいと思っていた昭和後期。時代の申し子のような男、鯨井紋次(小出恵介)は盗品を売って、不動産業、芸能やプロレスの興行と事業を大きくしてゆく。しかし、やっとの思いで政治家と繋がりをつけたあたりから、彼の運は変わり始める。

 若い紋次は、「愛する余裕」を持つために、金持ちになりたいといっていた。なのに、時代は彼にささやく。「もっと」。

 夏枝(ぼくもとさきこ)、冬香(ともさかりえ)、蘭(黒島結菜)、おそらくどの女とも関係を持ちながら、愛について考えたりしない。「もっと」という声が大きくて、余裕がないんだね。幕切れ、何が起きたかすぐにはわからない。クラッカーの音は愛と憎しみを含んでいる。

 小出恵介は、心の中で、いつも観客の方をみない。『イン・ザ・ヒーロー』の時あんなによかったのに。体の中で読みにくい字を読んでいるみたい。ベクトルが内向き。逆。フォース(『スターウォーズ』ね)で心の文字を周りの壁に映さないと体が生きない。開放ってことだと思うけど、そんなことより、お客さんはキャメラじゃない、お客さんは皆小出恵介を好きなのだから、大丈夫。

 ともさかりえ、紫のいい着物の後姿、きれいな弧を描いてゆっくりおりてくる細い腕。車のキーを受け取る。ださくなる寸前の完璧なタイミング、手がおりるまで観客は待つ。客をちゃんと待たせる。コメディセンスも素晴らしい。

 玉置孝匡、涙ぐむやくざの木村がよかった。