オンワードpresents 新感線☆RS  『メタルマクベス disc 1』

 ディストピア。2218年、廃墟と化した世界、そこにランダムスター(橋本さとし)と呼ばれる男がいる。彼はレスポール王(西岡徳馬)の配下、敵を蹴散らして手柄をたてる。バイクで道を急ぐランダムスターとエクスプローラー(橋本じゅん)の前に三人の魔女(植本純米、猫背椿、山本カナコ)が現れ、予言をしたうえ、一枚のCDを手渡す。そのCDは200年以上前のメタルマクベスというバンドのもの、ボーカルはマクベス橋本(橋本さとし二役)と名乗るランダムスターとうり二つの男だった。

 二つの世界を往還しながらマクベスが語られる。対立する二つの概念の、「きれいは汚い」(「あまからい」「いたきもちいい」)を見据えて目を離さない作劇だ。

 レスポール王を殺して自室にこもるランダムスター、びっしりとスピーカーで埋め尽くされた部屋でヘッドホンの音を聴くその姿は、もうクライマックスの先触れのように細かく微振動を繰り返しているはず、震動の中でランダムスターは、同時にマクベス橋本となっているのだ。最後に敵が正体を明かしても、ランダムスターはマクベスのように気落ちしないんだなあと思ったが、「きれいは汚い」、生死の向こう、善悪の向こう、批評の向こうの混沌とした場所へ、ランダムスター=マクベス橋本は行ってしまうのだろう。

 橋本さとしが研ぎ澄ましたようにかっこいい。ギターを高く掲げている冒頭から目が離せない。登場の歌がかっこよくて笑えて、芝居の世界にすぐ入れる。しゅっとしているのにそのことを忘れているような山口馬木也、王を大きく演じる西岡徳馬が印象に残る。

 ランダムスターにあれこれいうローズ(濱田めぐみ)、『アイデン&ティティ』を思い出したが、どちらもあんまりピリッとしない。厳しい女の人に、厳しく言い当てられたことなんか、ないのかなー。