「鬼の立ち位置で死ぬとはいい度胸だ」
はっと正気付くとそこはなんだか赤黒い地獄で、地獄の鬼キラーK
(長瀬智也)がいい感じにこんなセリフを今死んだ大助にいう。
修学旅行中に不慮の事故で死んでしまった大助(神木隆之介)。そんなに悪いこともしていない筈なのに、天国でなく、地獄にいる。大助は同級生のひろ美ちゃん(森川葵)が、自分のことが好きなのかどうかわからない、もやもやの頂点で死んだ。地獄じゃん!キスもしたことないのに!大助は地獄を出ようと、あらゆる手を尽くす。
「甘いものなんか食べられない」男の人が顔をしかめて言うたび、子どものころ(学生時代含む)はたくさん食べてたくせにと思う。それと同じに、軽蔑した風に「ばかだな」というと、子どもの頃(学生時代含む)ばかだったじゃないと思う。かわいかったのに。あのばかがよかったんだよ。あの、あとさき考えない、詰まらんことに一生懸命になる感じ。
この映画は全編、ばかが炸裂だ。高校生のばか、ロックのばか、中年のばか。ほんとはみんな、あとさき考えないばかの部分を持ったままなんだなあ。そしてこの世は地獄だなー。
地獄は絵巻物みたいになっていて、閉塞感でいっぱいだ。地獄っぽい。が、この混沌と閉塞が、観客の私にとって、映画レベルを超え、ほんとに生理的につらかった。いやだ。地獄でのやり取りには、なんか間(ま)が違うのにそのままになっているシーンがあり、撮る側にとっても辛かったのではないかと思ってしまった。あと寝ているところをキスしちゃえというのは、いくらばかがかわいいといっても、無理です。犯罪。映画の骨が細い。でもその骨はきれい。骨に背負わせるものが、満艦飾で多すぎる。長瀬智也、落差がいい。尾野真千子もよかったよー。