東京芸術劇場 プレイハウス 『酒と涙とジキルとハイド』

 人間て不思議だと思わない?なんて、水色と白のバッスル(腰当)つきドレスを着たイヴ(優香)が淡々と語り始める。一番いいところを見せられるのは、緊張しないどうでもいい人で、好きな人にはなぜかそういうところが見せられない、云々。うーんそれは女の子の永遠の宿題だよね、と思うけど、男の子だって案外そんなものかもしれない。

 初演と同じ、開いた本のようなセット、壁いっぱいの薬瓶、屋上に二人きりの楽団(まるでもっと大勢いるかのように聴こえる)がいて、イヴに背を向け机で何か書き物する助手プール(迫田孝也)。だが初演と何か違う。イヴの体、プールの体、役者の体が皆ずーっと「ものを言って」いるのだ。

 これ、台湾で、海外公演の水をくぐってきてるんだね。感情がきちんと体に伝わり、体がいろんなことを表現している。テレビのテロップみたいにいいところで巧く入る音響が、喜劇を助ける。特にビクター(藤井隆)の前半は、集中が全く切れず、やり取りを拾って面白くし、芝居をとても引っ張っていたと思う。海外公演がいい方に働いて、ちょっと強引だけど、再演は初演と格段の違いがある面白さだ。

 「私は薬が…」とイヴが重ねていう所、すこし単調で、変化が必要。しかし優香の「差」はとても進化していた。

 ジキル博士(片岡愛之助)が「二つの」という時、人差し指と親指を広げて見せるのが、「おやじくさい」ジキルをきっちり表現していておかしい。歌舞伎めくところはさすがだった。声はもう少し工夫してもいい。

 いつ歌いだしても、踊り出してもおかしくない、もうすこしでミュージカルになりそうな作品に仕上がっている。上演時間も二時間を切りコンパクト、楽しく観て、さっと帰れる。