劇団民藝 『ワーニャ、ソーニャ、マーシャ、と、スパイク』

 これ、トニー賞受賞作なの?トニー賞って、思ってたよりすごくないのかもしれないね。この作品、2013年か。

 民藝、アップデートできてる?追いつけてる?まずね、パンフレットの最後の「劇団民藝連名」っていう名簿は、男優が上なの?もう、開幕前に胸が塞がったよ。私たちの世代は、なんとなく「男の人のほうが立場が上」と思って育った。その「なんとなく」のなかには、名簿で男の方が上、ってことも随分影響してたはずだ。

 女優マーシャ(樫山文枝)の若い恋人スパイク(好演、岩谷優志)の見せびらかす裸を、ゲイのワーニャ(千葉茂則)が間近で四つん這いになってみるところ、絵面が変。正視出来ない。ワーニャ――ゲイにもうちょっと尊厳を持たせてほしい。この話は、アナログ世代の癇癪の大爆発だと思うが、『エドサリヴァンショー』『サンセット大通り』くらいはわかっても、全米のトラウマになった犬の死までは追い切れない。つまり置いてきぼりになる。それを避けるにはスパイクの「封筒を舐める、エロい!」という台詞をもっと無作法にして立てないと、ワーニャもあんなに長時間怒れない。今日は千葉茂則のプロンプターの声が大きく聴こえていた。

 マーシャは終始堂々としており、樫山文枝は「やりきった」って感じだろう。ニーナ(神保有輝美)に対して「アナタはいいのほめなくて」というところがマックス厳しい(そして唯一笑える)が、もっと全体にニーナに厳しくていい。神保有輝美は役にぴったりで、まさに輝いている。掃除婦のカッサンドラ(戸谷友)は大過なくつとめ、ギリシア悲劇風の台詞回しがよかった。問題はソーニャ(白石珠江)だ。最初の台詞は「隅田川をみる芸者」をイメージしてしまう嫋々とした発声だった。その発声と「カップを投げる」ところが結びつかない。もっとぶっきらぼうでいい。スパイク、シックスパックとは言わないがもすこしだけ鍛えて。