新橋演舞場 喜劇名作劇場 『恋ぶみ屋一葉 有頂天作家』

 上手と下手に貼りまぜの手稿、あるいは手紙のパネルがあり、上手のそれには「男だつたらどんなにかいいだらう」という血を吐くような筆文字が見える。一ミリ、また一ミリと世の中は変わり、すべて「男次第」だった女の境涯も、ほんの少し変わりつつある。面白い。

この作品に出てくる二人のヒロイン、文学を諦めて代筆屋と荒物屋を営む奈津(キムラ緑子)と、かつて吉原で芸者をしていた菊(渡辺えり)は一人の男を巡って恋敵であり、昔からの友人である。奈津は菊が生きていて、今東京にいることを、人気作家で菊の昔の恋人加賀美涼月(渡辺徹)に打ち明けられない。菊はそうとは知らず、自分の中に商才を発見し、生き生きと滞在の日々を過ごす。

 えーと、話としては、「昔」ってのは結局「昔」で、「今」や「ともに歳月を過ごした者」の方に価値がある、みたいな終わりになっていて、よかったね、大団円、に見えるのだが、実は違う。これ「男を卒業する」という、女二人の自己発見の物語なのだ。奈津は代書屋の看板を外し、樋口一葉の欲しがっていた簪を貰う。彼女はきっと作家になるのだろう。片や菊は日々もっと、さらに、「自分らしく」生きると決意する。

一葉の簪のくだりが、めっちゃひっかかる。一葉って峻嶮な高嶺のような文学者ですよ。そのほしかった簪を?男に?挿してもらう?ひっかかるわー。畏れ多いし。草助(影山拓也)声がいい。しかし、二度に分けて水を飲むとき、リアリティない。「渇き」感じてる?殴られる呼吸もだめさ。渡辺徹、後ろ向いてセリフいう時ききづらい。声大切に。それはキムラ緑子も同じ。二人のやり取りもっと仲よく喧嘩する。桃太郎(大和田美帆)後半集中欠く。台詞回しがきれぎれになってる。呼吸気を付けて。此花(瀬戸摩純)好演だが秋田弁立てる。春本由香、セット揺らしちゃダメだよー。