埼玉県富士見市文化会館キラリ☆ふじみ 『群盗』

 群盗=奪う人たち、と、すぐ思ったんだけれど、それでいいかどうかあやふやな気持ち。だってねー、台詞が聴こえなくって、芝居のサイズがみんなちがうんだもん。

 モール伯爵(鍛冶直人)の長男カール(小出恵介)は弟フランツ(新里宏太)の奸計に遭い、すべてを捨てて盗賊団の首領となる。カールの恋人アマーリア(池田朱那)はフランツに言い寄られるが、死んだと聞かされたカールのことが忘れられない。カールは彼女と再び会うために、変装して屋敷を訪れる。カールは父、恋人との絆(その絆がそもそもカールを奪い、縛っているともいえる)を消され、「自分」を奪われてしまう。残りの社会的な部分も盗賊団に身を投じることで「奪われる」。奪われつくしたのち、立ちあがってくるものは何か。「命を奪い」、奪い返したものを、彼は「公」にゆだねる。それが「自分」なのだ。って話かなあ。屋敷は凍るような冷たい場所として描かれ(家父長制の舞台?)愛が(愛のみが)その場所を暖めることができる。

 小出恵介、心の石の扉が、やっと30センチくらい開いたね。フランツの手紙を読んで暗くなるところすばらしい、ボーリングの球が胃の腑まで落ちる顔するけれど、アマーリエの件と赤ん坊の件も、そして子供になりたいというとこ、劫罰のとこ、同じように(違ったサイズの球で)表現しなくちゃだめ。大きく、はっきり台詞言う。こどもになれー。フランツ、一生懸命やっていて、この芝居を成立させるには最適の演技だが、将来的に言うとこれゼロだ。声が小さく、芝居しすぎる。皆もっとフラットに大らかに舞台に立てないと。アマーリエ、フランツを拒否するところからよくなり、胸の真ん中から言葉が出ている。ただ、声が小さい。上杉潤、一番ちゃんと台詞言えてる。パンフで後姿の伊藤武雄、いいの?顔忘れちゃうけど?