Bunkamuraシアターコクーン COCOON PRODUCTION 2022 『広島ジャンゴ2022』

 この作品みると、ジェーン・カンピオンの映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が、どんだけ西部劇にケンカ売ってたか、そしてカンピオンが西部劇からどんなに疎外された存在を代表しているかがわかるわけだが、そこ行くと蓬莱竜太、中途半端だよー。マカロニ・ウェスタンのヒーローの名「ジャンゴ」を、タランティーノがやはり疎外されたものである黒人に与えて映画を撮ったように、蓬莱は天海祐希の演じるシングルマザーにそう名乗らせる。牡蠣工場で営々と殻をむく天海(山本=天海二役)は、見るからに牡蠣のように閉じている。協調性は一切ない。シフトを組む責任者の木村(鈴木亮平)は窮地に立たされる。夢かうつつか木村は、西部の街広島で変身し、ジャンゴという女のもとで活躍する。

 野球の応援歌が同調圧力、ある意味ファッショの熱狂として働き、バットは凶器となり、おや、蓬莱さん振り切ったねと思ってると、それは下位のもの、疎外されたものたちの「民衆の歌」となる。んー?女の天海祐希がジャンゴなのに?位置づけあいまいじゃない?

 目深にかぶった帽子の下に、シャープな頤をのぞかせるジャンゴの登場はむちゃくちゃかっこいいが、娘ケイ(芋生悠)が隣に並びすぎてる。しかも芋生、ジョッパーズ着れてない。「着られてる」。鈴木が外枠に引いてるせいで、やりどころが少ない。歌うとこもっとタイトにね。これあなたの物語でしょ。宮下今日子、声出てる、もう一息。野村周平、声は安定し体幹もしっかりしているが、映画『ジャンゴ』のディカプリオくらいしか集中してないよ。集中高いともっと怖いよね。土井志央梨の台詞もそうだ。天海祐希、一番大事な台詞は「ジャンゴだって、」でしょ。呟いてもいい。ここが最高にかっこよくなるよう組み立てて。殺陣がキマってない。全員、スローです。