鶴岡市立加茂水族館

 鶴岡市立加茂水族館。年中無休9時から17時まで、最終入館16時、一般入館料1000円(団体900円)小中学生500円(団体450円)幼児無料。だがすべての情報が一歩入った途端消える。「クラゲアイス」。クラゲアイス?売店に並ぶアイスクリームに吸い寄せられる。いつのまにかアイスボックスの前に立ってたもん。すぐ買った。イチゴやバナナやミルクや、いろんな味がある。固すぎず、ゆるすぎず、ちょうど食べやすいアイスだ。おいしい。ただしクラゲだよ。どうクラゲかは行った人に確かめてもらうことにして私は水族館へ入る。頭の上に並ぶ何本もの釣り竿が目についた。江戸時代から釣りが盛んな庄内藩なのであった。心身の鍛錬としての釣りは武士道の一助にもなると認められていて、宝永頃から殿様が釣りをした記録が残っており、安政天明期の釣り名人の名前が今も語られる。10代藩主忠器が釣り好きであったことや、当時のお触れから武士二人が波にのまれた時も、「大波に気をつけろ」という忠器の言葉は残っているけど、釣りは止めなかったことがパネルにある。ギザギザの岩場に、泡立ってしゅうっと波がよせ、岩場には藁草履(?)の足がアップで見えてきて、その波の水がくるぶしを浸し、また引いていく。膝をついて海水に手を伸ばし、ちょっとだけ顔をつければ水族館はすぐそこ。魚と庄内は、すごく近い。

 まず展示は淡水魚からだ。ヤマメは海に入るとサクラマスという名の、ここいらで名産の魚になる。落ちかかる水槽の水の中でイワナと一緒にすいすい泳いでいる。どちらもひれの前側の際が白い。おしゃれ。湧水のなかのイバラトミヨは絶滅危惧種だそうだ。よーく見ると小さなとげが背びれに見えた。トゲザッコと庄内の人は呼ぶんだって。この地方独特の名前がいちいちかわいい。銀ブナはフナンコ、ウグイはハイ、フエザッコ、鯉もいる。この鯉が立派で、動く旧家の屏風みたいだった。金魚も丹精されている。角を曲がると、水面にポンプで波を起こしている水槽。釣ったら一生自慢になるだろう30センチくらい(いや50センチ?)はある海の魚たち。細身のサメもいる。カサゴはハヂメ、オコゼはオゴジ、アイナメはシンジョ。奥へ行くと暗い水槽が現れ、光線が二筋三筋、水を照らす。オオクチイシナギ(でかい)が、正面を向いて、水槽奥から前進してくる。しんしんと、しずしずと近づいてくる黒い大きな魚に、(…なに⁈)って、エンゲキのオープニング(ニナガワとか…)に感じるサスペンスフルなスペクタクルを思いました。

 はいここからはクラゲです。前世紀の終わり、存亡の危機に瀕していた加茂水族館は、偶然サンゴの中から見つけたクラゲを育て、クラゲの展示を始めたのだった。「鶴岡市より委託料360万円を頂き飼育係を1名採用、奥泉和也がクラゲ展示に専念する。お金がなく顕微鏡が買えない中でスナイロクラゲの繁殖に成功」ここ、ちょっと泣いた。展示のはじめは、「パルモ」という、お味噌汁のお椀くらいのクラゲから。お椀の縁は「すみれ色」。お椀を少し広げ、そして少し閉じ、波打たせるように泳いでいる。透ける白の躰、「おきれいね」って感じ。かと思えば棒状の、「うわっ」と声の出た怖いクラゲもいる。シンカイウリクラゲ。桜色でひょろながいウリ型だ。怖い。怖すぎる。そして、小さい小さい、親指の先くらいの、くすくす笑っているようなカミクロメクラゲもみた。めっちゃかわいいの。デュエットするように本箱みたいな水槽を漂っていた。「きれい(わあ)!」「こわい(うぇー)!」「かわいい(キャッ)!」こんな相反する感情を抱きながら「なにかをみる」って初めてです。かもすいの、線描きのクラゲグッズがかわいいです。メモパッド買ってしまった。あれ、ウェハースにしてアイスに入れられないのかなー。