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東京芸術劇場 『ハムレット HAMLET BY William Shakespear Directed BYJohn Caird』

夢。誰の夢か。

 この人たちは皆、夢と、夢でないものの間で息をする。それはとても芝居に似ている。

 うすく傾いだ四角い舞台。その舞台の下手には本当の観客席が設けられ、上手の、暗い、役者が芝居の進行を見守る席と対峙する。彼らはホレイショー(北村有起哉)の呼び覚ました記憶なのか。観客と登場人物、音楽家は互いに見守りあい、どちらがより夢か見定めあう。

 ハムレット内野聖陽)も、王(國村隼)も、オフェーリア(貫地谷しほり)も、ガートルード(浅野ゆう子)も、皆夢を見る。そこではハムレットはフォーティンブラスでありまた叔父の王に似る。彼は正当な王位継承者でありながら叔父を殺して王位を簒奪するものでもある(彼は王冠をかぶろうとして倒れる。)のだ。オフェーリアはガートルードになった夢を見、ガートルードはオフェーリアになった夢を見ているのかもしれない。いや、オフェーリアはガートルードで、ガートルードはオフェーリアなのかもしれない。ガラスのコップがありふれた水を非現実な円筒形に切り分けるように、どこかに夢と夢でないものを分けるとても薄い、繊細な仕切りがあるはずだ、水の表面のようなしきりが。ハムレットの人々が上衣を残して舞台奥に消えてゆくとき、残された乱雑さにはっとする。コップだ。現実。ついいましがたまで、私は水がやすやすとコップなしで立ち上がっていたのを目撃していたような気がするのに、この夢は生きて動き、零れる。これは私の夢だったのか。

 貫地谷しほりとレアティーズ(加藤和樹)の歌う二声の節は、ものすごく説得力がある。二役のオズリック頑張れ。浅野ゆう子、低い声が美しいが、テンポがゆっくりで少し周りとかみ合っていない。