新ロイヤル大衆舎 『王将 第二部』

 第一部では、「将棋と生活」の相克を坂田三吉福田転球)は生きていたが、第二部では、「将棋と政治」が語られる。政治っていうか、世間の評価だね。それが三吉を引きさらい、持ち上げ、落とし、もみくちゃにする。早手回しに三吉をおだて、「関西名人」という、関根八段との信義に悖る位置につけようとする世話人西村(陰山泰)。これだからあほは困るといいながら坦々と事を運ぶ。こんな人には要注意だなと思うのだが、これといって「悪」の目印のようなものはない。後援会会長の金杉子爵(櫻井章善)だってそうだ。ただ駒みたいに、三吉をおもいどおりに「動かそう」としているだけなのだ。

 押し浪や引き潮の中で、三吉を支えるのは長女玉江(江口のりこ)と次女君子(森田涼花)だ。何日にも及ぶ木村八段との対局の結果を宿で待っている二人。劇場入り口に顔を向け、ふと「おとっつぁんとちがうか」と父の気配を聞く。一瞬のかすかな間、この時二人が待ち受けるのは、実際の三吉というよりももっと大きな、ソフトでなつかしいもの、「父性」のエッセンスみたいなものであるような気がした。そしてこの一瞬の中に娘たちの盲目的な愛が詰まっている。父に会わずに去る玉江の震えながら涙をふく指がきれいで、素晴らしい演技だった。指と言えば、坂田の弟子松島(石田剛太)の駒を置く手が決まっていて、挙措が美しい。中継で見る棋士の姿そのままである。

 後援者宮田(山内圭哉)と三吉の酒を飲む顛末が可笑しく、面白い。しかしもう少し、「俳味」っぽい可笑しさを出してもいいような。三吉は主役なので、冒頭シーンなど表情をくるくる変えたくなるところを今一息抑えた方がいいと思う。

次は第三部。玉江ちゃんと君子は、どうなるのかなー。