三時間半の大作。四谷怪談のお岩を巡る男たちの嫉妬や、四谷怪談が一種の家庭内殺人であることから、現代の事件、俗に北九州連続殺人事件と呼ばれる家族の崩壊というか、壊滅事件を詳細に語り、二つを交叉させようとする。
舞台の頭上にはニワトリなどの飼育檻に入れられたボディ。ボディの男、女、片足、腰など。思うにこの空間も飼育檻のように金網で覆われているのだろう。
観終わって思うのは、作劇がどこか高い所を目指そうとしているということだ。谷口賢示の最後の告白などいい演技だし、殺される現代パートの若夫婦(青木空夢、安藤遥)の哀切なシーンもある。しかし、特に前半、芝居が全部長いPVみたいにかっこいいシーンばかり、いいところだけをつまんだ大予告編のようなのである。湯呑を持つ場面もなければ死体を運ぶシーンもなく、これじゃあ出ている誰もが、上手くなるスキがない。お岩の田中良子は芝居をしっかり背負おうとするあまり、どの仕草、どのセリフもやりすぎている。
もし二枚目のPVのような芝居がやりたいのであれば、明らかにこの現代の殺人事件は題材として「まちがい」である。
大石内蔵助(谷口賢示)と容疑者(西田大輔)が舞台上ですれ違うところ、「いい話」と「悪い話」がすれ違う時、ここには通底するものがあるのかもっ!と一瞬身を乗り出したが、気配で終わってしまった。
登場人物が多すぎ、内面になかなかフォーカスされない。
生き残りのひとにむかって田中良子がわかりきったことを叫ぶように言うのを、ひどいなあと思って眺めたのだった。