本多劇場 悪い芝居vol.27 『今日もしんでるあいしてる』

 「アレのせいで旗上げ以来はじめて本公演のない1年を経て」(チラシより)。

 ねえ、その1年の間何をしていたの。もちろん生きるために働いたり、ショックだったり辛かったり大変だったりしたのだと思うけど、身体鍛えたり発声練習したり滑舌頑張ったりしなかったの。

 そこが一番謎。客演の井上メテオに、小麦粉とキャベツ運ばせて、ワンシーン丸ごと預けている。それは…勇気ありすぎじゃない、山崎彬?彼が何か言うたび、刑務所帰りの逆井祈子(サカライキコ=潮みか)がにっこりする。ここんとこ、私は根本的に間違っていると思う。なぜって井上は面白いこと、共感できることを殆ど全く言ってない。ここで笑ったら、逆井と潮は、舞台上で自分と観客に「嘘をついている」ことになる。嘘。嘘の上におうちは立たない。演劇だっておんなじだ。あと、関西弁の必然性が感じられない。関西弁で喋ると、面白くないこともそこそこ耳ざわりよく聴こえる。ここ、考えてほしい。

 ハートブレイクウィルスという伝染病のはびこる近未来、九木大(ココノキダイ=牧田哲也)と死んでしまった妻儚(ハカナ=文目ゆかり)の三十年余りが語られる。芝居の芯は心がキレイだけど、構成がわかりにくく整理されず伝わりづらい。1時間たったところで粟根まことが何者であるかやっとわかる。(粟根の笑顔がすこし「嘘」っぽい。)中では、「電子レンジの時間」が凄く面白いと思った。客席にも舞台にも、等しく流れる共通の時間である。このたくさんの客演陣、山崎彬は才能もあり「いいひと」なのであろう。早稲田の大隈講堂裏テントで、第三舞台を初めて観た時のことを思い出した。

 とにかく、「嘘」と「関西弁」について本気で考え直してもらいたい。深く考えること、発声滑舌訓練が劇団に大きく不足している。