シアターコクーン CUBE 20th presents 音楽劇『魔都夜曲』

 7月19日、藤木直人さんお誕生日おめでとうございます。

 藤木直人が今日45歳だと知って本当に驚いた。30代にしか見えないもん。世の中が求めている藤木直人とは、ハンサムな知性派であり、その要求に彼も、よく応えてきたのだと思う。

 今日の役はいつもの藤木直人の役とは違う。馬鹿正直な御曹司である。そしてその馬鹿正直が、いつか光り輝いていなければならない。藤木直人は「自分」の上に役柄を足して、「気のいい藤木直人」を演じるが、そうではなくて、防御を外して(竹刀を構えず下げる感じ)、体の中の「いい人」を探さないと、ボタンを掛け違ったシャツのように全てがうまく働かなくなってしまう。自分の中のアリョーシャ(『カラマーゾフの兄弟』)を探していただけるようおねがいします。体の中にその人がいるからこそ、紅花(ホンファ=マイコ)は清隆(藤木直人)に惚れ、志強(チーチャン=小西遼生)は去るのだ。

 志強の「紅花はお前にくれてやる」というセリフが巾いっぱいで出すぎず引っ込まずとてもよく、中国訛りも自然に聴ける(リスペクトがあると思う)。清隆と紅花が去る時、清隆がスーツケースを持っているのがちょっとそぐわない感じがした。1939年、上海の租界にあるジャズの店で物語は進む。イン・ザ・ムード、ブルームーンなど、こんないやな世相で流行した美しい音楽だったんだなあと思った。ブルームーンの最後のハモりがきれいだったし、字春(ユーチュン)の秋夢乃の歌がとてもよかった。あんな理由でつきあって別れるなんて、ひどすぎるような気がするよ。

 川島芳子壮一帆)が様になっていて、煙草の扱いがスマートでかしこそう。山西惇の二役、外務省のお目付け役籾田と甘粕とで、すこし混乱してしまった。混乱させる狙いがあるのかな。