2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

Bunkamuraザ・ミュージアム 『ソール・ライター展』

麦わら帽子で街に出る。 「あ、ソール・ライター」 麦わら帽子のつばが視界上方を水平に区切り、キャノピーのように境界を作る。手前と向こう。私と他者。 細かく編まれた麦わらの覆いの下で、外の景色は一層生き生きとして隔たり、近く、遠い。店の前に水を…

木ノ下歌舞伎 『東海道四谷怪談――通し上演――』

「お岩さんてさ、井戸から出てくるやつですよね」違う違う。お岩さんは井戸から出てこん。お岩さんは夫に横恋慕した娘の親に毒を盛られて、顔が醜く変わる。夫はそれを知ったうえで、お岩さんを捨て、若い金持ちの嫁を貰おうとするのだ。凄惨な髪すき(毛が…

一周忌追悼企画 蜷川幸雄シアター 『身毒丸 復活』

少し緩い白いズック。少年(しんとく=藤原竜也)の足の指は、その中で地面や現実につかないよう、固く縮こまっている、とおもう。目に痛いような白いシャツ、母のない子らしく伸びた髪、つーんとまっすぐな鼻梁、すくめたほそい肩。腰高に黒いズボンを引き…

一周忌追悼企画 蜷川幸雄シアター 『ジュリアス・シーザー』

上昇と拡大、『ジュリアス・シーザー』の舞台セットの大階段を見て、そんなことを考える。男の人の世界って、たいてい、上昇と拡大を基盤にしている。少年漫画(例えばドラゴンボール)なんて、上昇と拡大の繰り返しだよ。そして、その裏の、下降(転落)と…

上野の森美術館ギャラリー 『女たちの絹絵』

品。グエン・ファン・チャン(阮藩正 1892―1984)の画には気品があり、それが凡百のファンシーでセンチメンタルな絵、プロパガンダとなるかもしれない宣伝美術から彼を遠ざけている。 その気品の中には、なにか言いがたい悲しさみたいなものがひっそり籠って…

東京国立博物館 特別展『茶の湯』

茶筅とお茶碗持っている。お茶を習ったこともなく、お点前なんて知らないけど、お抹茶が好きなのだ。手前勝手に、(お抹茶のひとり分の量がわからない…。)ってところから、ひとり試行錯誤で、おいしかったり、おいしくなかったり。最近はネットにお茶の立て…

原美術館 蜷川実花『うつくしい日々』

蕃茉莉(ばんまつり)が白と紫の小さな花を咲かせ、深紅の薔薇が身を反らして花弁を巻き上げる季節に、蜷川さんは亡くなっちゃったんだなと思っていた。白、紫、赤。激しい、ヴィヴィッドな色。 しかし、蜷川実花の写真に見る父の死は、淡い、美しいうす紅色…

秋田雨雀・土方与志記念青年劇場 第116回公演 『梅子とよっちゃん』

「あんまり好かないから。西洋人ぶっているから。」 控えめに、身を固くして登場した田村俊子(片平貴緑)は、築地小劇場に参加しない理由をこんな風に言う。 土方与志とその仲間たちが作り上げた、鷹揚で明るく知的な雰囲気を、外側から批評する目、この視…

Blue Note tokyo 『JAZZ FOR CHILDREN チャイナ・モーゼス』

子どもの日。路地や駅頭で、朝から、ものすごくハイテンションな子どもたちのきゃあきゃあ声が聞こえる。今日は子どもが主役だもんね。ブルーノート東京では、「JAZZ FOR CHILDREN」と題して、お昼の三時半からChina Mosesのショーが開催されました。 次々に…

新ロイヤル大衆舎 『王将 第三部』

本筋の運びとはあまり関係ないような、「なごやかさ」を出すくだり、お茶だと思っていたものが違っていた、という、空々しい段取りと笑いになりかねないくだり、これ、北条秀司のオリジナルだろうか、腕利きの俳優たちの手にかかって、まるで今生まれてきた…

GEKISHA NINAGAWA STUDIO公演 『2017・待つ』

舞台が暗くて、隅にあるデュシャンみたいな便器しか目に入らない。しばらくすると薄暗がりに、祭壇のような(ぎっしり)正面の混沌がぼうっと現れる。ラッパ型の顔を伏せて群がり咲くダチュラ(チョウセンアサガオ)、ドーリア式だかイオニア式だかの柱が斜…