M&Oplays produce  『ロミオとジュリエット』

 原作通りなんですよこれ、と、終演後、席を立つ隣の人に言いたい気分。驚くよね。宮藤官九郎はワン・アイデアで二時間のシェイクスピア、それも『ロミオとジュリエット』をねじ伏せる。

 にしても何故ロミオは胸板の厚い、短躯・五十代の三宅弘城なんだろう、彼がロミオを演じることでジュリエットは細く小さく可憐に見え、キスシーンなど、(キスするのかよー!)と無残ていうか可哀そうになってしまう。ま、このキスシーンが意外にも繊細で、見て嫌な感じは全然しないけどね。

 どのシーンも面白く仕上がっており、中でもティボルトの皆川猿時は出色。剣を抜く前の顔など、こういうのを華があるというのだと思った。マキューシオの勝地涼ももちろんとてもいいが、巧くやりすぎている。もっと、シェイクスピアの台詞が野太く言える人にもなってほしいのだった(希望)。

 やっぱね、ワン・アイデアで二時間はちょっときつい。皆々、シェイクスピア役者で、このように軽やかに笑いもできる、っていう感じだとよかったのでは。

 森川葵は、最初のキスの前の不安そうな表情がすばらしい。舞台の台詞は、特にシェイクスピアは、不安な感じや悲しい感じや幸せな感じを、「作曲」しながら進んでいかないといけない。幸せな感じが3つ続くとすると、その3つをすこーし調子を変えたりしないとね。前の台詞の調子をよく聴いて、うまく自分の台詞をすげないと。よく聴いてね。

 最初は出てくるだけで、「あーあ」という一言で笑ってしまう三宅ロミオだったのだが、息を吐いてからクスリを一気に飲む彼に、純情さを感じました。