本多劇場 第32回下北沢演劇祭参加作品 劇団 東京夜光 『悪魔と永遠』

 4年前、下北沢のキャパ100人ほどの劇場で公演を打っていた劇団が、本多劇場(386席)で『悪魔と永遠』の幕を開ける。うーん。すごいね、三段跳びのようだ、しかもスズナリ飛ばしてる、というわけで、リリースする側は自信を持っており、受け取る側は居ずまいをただして受け取る、気合の入った立派な作品であった。

 経理で働いていた鞍馬正義(東出昌大)は、羽目を外したある夜、クラブで知り合ったマリア(前田悠雅)と雑居ビルの屋上でクスリをやり、自殺願望のあるマリアもろとも地上へ飛び降りてしまう。女は死に、正義は刑務所でその償いの刑期をつとめ、建設会社の足場鳶として再出発する。再出発って、あり得るのか、「再」「再」「再」と罪は巡り、償いは終わらない。絶対的光明としての神(私は許さなくても神は許して下さる)はいない。正義の生きる人生はまるで、無間地獄に落ちたようである。出てくる人も、苦しい事情を抱え、業の上に業が積み重なってゆく。鐘の音は鉦の音にも聴こえる、そしてエレキギターシンセサイザーの、濁った世俗の音にまぎれる。

 東出昌大、以前キズに思ったとこは、すべて修正されてる。母音の「あ」音が割れることが多く、ものすっごい損。身体の隅々までコントロールできていない、腕組みの「かたち」、変だよ。殺人を犯し、正義を脅す我聞(尾上寛之)好演、最後の姿まで不自然でなくつながる。

 「いきなり本多」の劇団らしく、芝居がいまいち。サイズがねー。草野峻平大振りしない。コンパクトに。村上航、とりあえずここでは前時代の演劇の事は忘れて(特に前半のコミック)。音響が大袈裟。

 「他者」と「自分」、その業の中にしか自分はいないという終わりなの?物足りないよね。正義、「信用ならない語り手」のように見えるけどさー。