東京ガーデンシアター BOB DYLAN『"ROUGH AND ROWDY WAYS" WORLD WIDE TOUR 2021-2024』

 ううー。昨日(11日東京公演初日)、すっごい良かったらしいじゃないの。

 何かの交響楽のしっぽが鳴って、バンドの全員がささっと舞台に上がり、何かひずんだおと、ボーカルなしで音を出す。そしてWatching The River Flow。ギザギザしてる。ボブ・ディランの歌詞のa mountain of swords(False Prophetね!)みたいだ。このあと4曲目まで、なんか音が合わない。勝手に音出している。I Contain Multitude の女王を歌うくだりで、おや?グルーヴか?と一瞬思うんだけど、最後の締めで、ボブ・ディランが、すんごい大きい、子供の歌い口でピアノを鳴らしたりするのだ。When I Paint My Masterpiece(おおっ!あの!と客席がどよめく)のドラムスとか、怒るとかじゃない、わらう。とんとん。ボブ・ディランの歌世界と全く別の、かわいい音なのだった。客席で居心地悪そうに座りなおしている人が目に入る。うーん。二万円だもんなー。この後に続くBlack Rider で、急に演奏がシャープになる。そしてMy Own Version of You、きょう、ここが一番よかった。ボブ・ディランの歌詞、ボブ・ディランのチューンに、陰影をつけるドラムやギター、ディランの歌の語頭(ここがびみょー)で出す大きな音が、まるで詩を空間に彫刻してゆくみたいなのだ。I’ll Be Your Baby Tonight、バンドがこだまのように遅れてついてくる。Delayの音楽やね。

 Key Westは、空間のしかるべき場所の、あるべき位置(鋭く截った、三角の溝)に音がはまり、ここも彫刻。

 後半はよくなるけど(ディストーションが目立つ)一番良かったとこまではたどり着けない。寂しいぜ。 

 透き通る大男(ジブリでご覧ください)が体じゅうに白い小さい矢印をつけ(それには「ケルアック」だの「ウィリアム・ブレイク」だの「キューバ危機」だの、細かくきれいな黒文字で書き込んである)、夜っぴて森を育てて、朝方山脈に溶け込んでいくようなライブ希望。本気で来い。