PARCO劇場 PARCO劇場50th Anniversary 『ラビット・ホール』

三層に仕切ったたいへん理知的なセット、下手第一層はしゃれたダイニングでアイランドキッチンがあり、二層目は何か透明の通路と、棚とカップボードの部屋が見え、一層目と三層目をぱっと見、ケージのような階段がつないでいる。このセットの意味合いが、なんかわからない。あの透明の通路は、子供部屋と、それからパラレルに広がる、ありとあらゆる可能性に開かれた世界に通じているのかなあー。あれがラビット・ホールの抜け道?

ベッカとハウィー夫妻は圧し潰されそうな苦しい牢獄にいる。二人は八か月前一人息子のダニーをなくした。上手のリヴィングのおもちゃ箱、ダイニングの隅の木のパズル、冷蔵庫に貼られたつたない3人家族のクレヨン画、傷は生々しく、二人は自分の気持ちを抑え、立ち直ろうとするのにいっぱいいっぱいで、相手のことがよく見えない。妻のベッカ(宮澤エマ)は小さな子供服を洗濯し、処分することはできるけど、夫ハウィー(成河)とセックスすることが無理である。夫はクレヨン画を片付けた妻を許せないし、息子のかわいがっていた犬を取り戻したいと思っている。そこに、妊娠した妻の妹イジー(土井ケイト)と妻の母ナット(シルビア・グラブ)がからみ、家族は再生への道をこんがらがりながら探し求める。

 すべてが冷蔵庫の中にしまわれていて、少し温度が下げてある。アメリカのこういう話って、「えっまじ」って思うくらい、何重もの悲劇が重ねられていて、非現実のあまり半笑いになることあるけど、これはそこを勘案してるね。宮澤エマ、初めていいと思った、理知的。どの人も好演し、特にジェイソン(阿部顕嵐)の、最初の引き下がらないところ、人間関係に疎い、ぬれっとした感じがいい。

 宮澤エマさー、最後なぜそういう気持ちになるのかがわからない。理知的はいいけど、水面に姿を現す感情を見えるところできちんきちんと押さえてほしい。夫のどのしぐさ、どの光景が心に来て、自分の水面上にその行為が現れるのか。さざ波だつこころを、もっとよくとらえる。土井ケイトの前半の台詞、「へんなかんじ」という訳と土井の言い方がよい。あっさりみられる理知的な芝居、もう少し、自然に噴きこぼれる熱い涙があっていいよねー。