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青年座 『見よ、飛行機の高く飛べるを』

 「東京の、首にハンケチ巻いて演説するような、そんなおなごなんぞはペストだ!国賊だ!本当の新しいおなごでにゃぁ!」

 校長先生(平尾仁)のセリフを聞きながら、そぉっとその彼をピンセットで摘まんで、現代の下北沢の野に放つ。

 「わぁああああ」

 三日ともたずに儚くなるだろう。なのに、青鞜の宣言文を読む延ぶ(安藤瞳)をみていると、胸が詰まる。とても永い抑圧だ。

 1911年(明治44年)、岡崎の女子師範学校。教師たちから国宝と称せられるほど出来のよい光島延ぶは、一級下の杉坂初江(小暮智美)と仲よくなる。初江は回覧雑誌を出そうと延ぶたちに持ちかける。深夜の談話室で秘密に話し合っているうちに、予想外の事態が起こり、それは初江と延ぶを先頭にしたストライキへと発展する。

 大人であり小心者である観客の私は、少女たちの団結が切り崩され、裏切られるだろうと先を見越してしまう。見上げる空に飛行機が高く飛び、その陽に輝く影と、現実の間でせめぎ合う心。延ぶが少女の顔から一人の女性の顔に変わってゆくのに見入った。杉坂初江の幕切れのセリフは、明るく、子供のように澄んでいて、一筋である。小心者にも信じられる。たとえその道のりは簡単でなくとも、新しい時代が来るような気がした。きっと新しい時代とは、このようなトーンの、このようなひとことの中にあるのだ。

 女学生たちのリアクションが繊細でとてもよく練られている。みんなで胸をどきどきさせて田山花袋の『蒲団』の朗読に聞き入っているときの肩先がかわいかった。誰も前に出ようとしないストイックな感じがちょっと驚きで、すこし平板ではないかと思う。藤夏子の血もあり涙もある菅沼先生がいい。