モダンスイマーズ 句読点三部作連続上演第一弾 『嗚呼いま、だから愛』

 ブラインド、冷蔵庫、食器棚、シンク、キッチンカウンター、仕事机(仕事部屋)、ダイニング、和室の座卓、ダブルベッド、長方形に作られたセットの長辺の3列目に座り、目で装置を一つ一つ確認する。どこの家にもあるために、(自分ち?)と思うくらい既視感でいっぱいで、実人生のほぼすべて、私生活の凝縮された舞台を小さな積み木がぐるりと囲み、そのグレー、白、黒の色分けされた家のミニチュアが、塔婆のように、位牌のように、びっしり生活を覆う。この感じ、なんか始まる前に、もう叫びそう。きゃー。

 この家に、星野多喜子(川上友里)は苦悩と夫一貴(古山憲太郎)とともに棲む。結婚6年、セックスレスになって2年。初め舞台には多喜子、そして一貴がいる。前の観客の頭でよく見えない、と少し苛立っていたが、実はそれくらいで十分。だって私たちは、息を殺してとある家の中を窃視しているのだ。多喜子は事情や真情を語ってくれるけど、やっぱり窃視の気分は離れない。役者の声は嗄れ、セリフは縒れ、ドキュメント感がピークになる。

この家に多喜子の親友(太田緑ロランス)とその夫(小林竜樹)、多喜子の美しい女優の姉(奥貫薫)、姉のマネージャー(西條義将)、多喜子のマンガの編集者(津村知与支)が現れる。

多喜子のセックスレスの悩みを重くしているのは「ブスである」「愛されない」というトラウマである。用水路を400メートル流されるという過去をもちながら、よく結婚できたね、しかも用水路に落としたグループの男と、とそこに執念めいたものを感じたり、絵空事のように感じたりする。大概の女が、たぶん、「ブス」だなと自分のことを値踏みしながら、ハードボイルドに生きているのである。役者は皆好演。酒場でこんな人たちみかけるなあって思うのだった。