星新一の黙示録。
日本の本を読む子供なら、小学生の時に一度は読んでいる軽い星新一の、重い背骨を成すような作品がオムニバスで六篇続く。暗い作家だなあ星新一。結構楽しく読んで、すーと忘れてしまったことを申し訳なく思った。
舞台はぴかぴかと反射する琺瑯のようなタイルのような黒で覆われ、それはモノリスを思い出させ、シュレディンガーの猫の箱、中では上下左右が見失われてしまう遊園地のおとぎの箱(鏡の部屋?)にも似ている。
演出家のチョン・インチョルは、現代社会の私たちが多かれ少ながれ自他の死に手を貸していると考え、この連作にI Am a Murderer(私は殺人者です)という題名をつけたのだそうだ。どうして取っちゃったの?手がかりが失われちゃうじゃん。
まず、ボッコちゃん(キム・ジョンミン)のアンドロイドっぷりがいい。盃を口に運ぼうと曲げられる肱はゆっくりとまるで止められないように一定の速さで動き、映画行をやめさせられる動作は肉感的な発条(ばね)を感じさせる。「飲むわ」のマシレヨという言葉がとても美しく聴こえた。「宇宙の男たち」の後ろでぎらぎらと生き物のように輝く星座がふと変わるところがとてもよかった。「花はどこへいった」の反戦歌が流れる。
一つ一つがきちんと独立し、敬意をもって作品化されていて、いいと思うんだけど、最後に発せられる「おーいでてこーい」はエピソードをまたいだ方が面白かったと思う。
「ひとつの装置」は少し台詞に頼りすぎている。動きがもっと練られ、振付がついてヌーベルダンス並みに鍛えられているとよかったのに。