PARCO THEATER OPENING SERIES 『ゲルニカ』

 (これがゲルニカ

 開幕前の赤い幕を眺め、血塗られたってこのことよ、と心に呟くのであった。照明の加減で上の方が不吉に黒みがかっている。きっと、栗山民也には「ゲルニカ」のモノトーンの中から、襲い掛かってくる兇暴な赤い色が見えたんだね。

 元領主の娘(サラ=上白石萌歌)、人民戦線に加わる大学生(イグナシオ=中山優馬)、新聞記者たち(クリフ=勝地涼、レイチェル=早霧せいな)、人民戦線兵士(林田一高)、バスク民族党員たち(ハビエル=玉置玲央、アントニオ=後藤剛範)、食堂のおやじ(イシドロ=谷川昭一朗)、フランコにつくサラの母(マリア=キムラ緑子)、その魂を操縦しようとする神父(パストール=谷田歩)。様々な人間が様々な立場で1937年を生きる。何も知らない、知らされない娘サラは、婚礼の日を迎える。しかし婚約者のテオ(松島庄汰)はファシストの求めに応じて、さらりと出征してしまうのだった。

 母マリアに罵られ、サラは突然成長する。マリアに向かって「まちがっています」と言い切るのだ。ここ、魂の目ざめじゃないの?いってみればテト(ナウシカね)くらいの。そしてこの一連の台詞のうちに、つよい母とタメを張る丈高い女性にならなくちゃいけない。おもしろいとこじゃん。もっと気合い入れてほしい。あと、思い悩むときの歩く姿(前傾姿勢)が美しくない。

 イグナシオ、クリフ、ハビエル、テオ、皆大体柄が似通っていて、1937年の若者の抽象的な像を作っている。一人の青年の、四つに割れた貌だ。振り切っていい。玉置玲央、青くなる酔っ払いいまひとつ。石村みかの役、脚本が不分明。中山優馬、最後強めで。

 拍手して足元を見ると、赤く設えられた絨毯がある。中からあの色のない絵が流れ出してきそうな気がした。