自由劇場 ミュージカル『ダブル・トラブル』2022夏 Season C

 明るさが、二段階に調節できるサーチライトみたいに、原田優一の喉が二段に開いて、客席を眩しく照らす。準備万端だね。テンションと集中力もきっちりだ。二人(原田優一、太田基裕)とも生き生きと芝居する。初演より、前半躍動しており、面白くなってる。

 けど、「できる」と歌うキメのフレーズが最後を除いて2回ともキレイにハモってなく、がっかりだった。劇場出る時、後ろにいた娘さんが、「原田さんて歌うまいよねー」と夢見心地に呟いていた。確かにうまい。でもさ、あたし「ラミン・カリムルー基準」だからさ。失敗しないでほしい。

 ジミー(原田)とボビー(太田)のマーティン兄弟が、ハリウッドの映画業界に作曲家と作詞家として呼ばれるが、曲の締め切りは数時間後で、災厄が次から次に二人を襲う。俳優はふたりきりでしっかり地を踏んで、迫りくる災厄をすべて演じきらなければならない。しょっぱなの、ミスター・ガーナー(太田)の迫力がいまいち。そしてそれを受けるジミーが、ミスター・ガーナーの台詞を全然聴けてない。ハイテンションが災いしてる。物干しざおの接手がゆるくて落下しそうって感じ。継ぎ目のエネルギーの受け渡しがなめらかでないよ。「レベッカ」はちゃんと「大きい役」になっていた。シーモア(太田)がレベッカの服を受け取るところ、真率な愛情がこぼれてなくちゃダメ。この台本、やっぱり黄金の耳を持つ音響さん(原田)が弱い。ということは現場ががんばらなくちゃならない。「よくあるおじいさん」、「自分の抽斗のなかのひと」でなく、きちんと人間観察したうえで舞台に載せてほしい。これ、どの人物についてもいえることだよね。あと、また何度も額縁落ちてたが、着替えの時間稼ぎなの?それは上策ではありません。