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DULL COLORED POP プロデュース『最後の精神分析――フロイトvsルイス』

精神分析で有名なフロイトは、強硬な無神論者でもあった。このフロイトと、熱心なクリスチャンで、聖書を基にしたファンタジー『ナルニア国物語』を書いたCS・ルイスが、神の存在をめぐって架空の論戦を繰り広げる。今しもドイツとイギリスが開戦しようとしている1939年9月、ラジオからはドイツがポーランドを侵攻して退かないこと、チェンバレン首相の声明、ジョージ六世の声明が順次流れる。

そこは亡命してきたフロイト(木場勝己)の書斎である。中央に置いてあるのは治療用のカウチ、両脇に椅子、舞台奥にたくさんの彫像のコレクションを入れた棚、その横に仕事机、上手に湯沸しの乗ったテーブル、下手に電話台がみえる。この『最後の精神分析――フロイトVSルイス』はアメリカで2009年に初演、翌年に再演され800ステージを重ねた作品だということだ。

やっぱりねー。神が身近だよね、西洋は。

と、思いながら観る。神を語る前に避けて通れない父の問題、ファシズム、理由なく人間を打ちのめす苦しみの存在、原罪とは、性とは、二人は激しくやり取りする。ついていくのが大変だ。そうしているうちにもフロイトの状態(癌である)は悪化し、ルイス(石丸幹二)は娘以外にはフロイトが触れさせない人工口蓋を外してやるしかなくなる。このシーンの二人の表情が見えなくて、残念。全然見えないのは、力動的ではないのでは。それとも、全然見せないからこそ、力動的なのだろうか?

 小さなステージで、二人の俳優のこまかな表情の動きをたどりながら観られる贅沢な芝居だった。最後には、景色にルイスが見るという光の塊が見えるような気がしたし(彼に世界がどう見えるかが納得できた)、しゃべることの後ろにある暗い森が、フロイトの目つきからはにじみ出ていた。