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おちないリンゴ#13 『揺籃』

「私、このままこの家に住まわせてもらっては駄目ですか?」そらダメだろー、と、半端な世間知でいっぱいの私は頭の中でつっこみを入れる。

 リンゴの木のある家。揺り椅子からいつも木をながめていた一人の男が死んだ。男には昔妻子があったが、晩年は恋人(由川悠紀子)と一緒だった。恋人のもとを、別れたきりの二人の娘が訪ねてくる。恋人は娘たちにそんなことを言う。大丈夫か。

 あらゆる登場人物にそれぞれストーリーがあって、上下動する波に揺られているように主筋が読めない。しかも脇筋が皆奇想に満ちている。隣に住むじつはストリッパーの女(小暮智美)。交際相手でありながら彼女のストーカーを続ける男(木内コギト)。架空の子供がいるようにふるまう夫婦(北村雄大、加藤記生)。生きることから降りているひもの男(森田陽祐)、その愛人(村山みのり)。正直、作家の真意がどこにあるのか、うまくつかめない。観ながら焦る。

 骨箱をふれる指先、後ろを向いた時のあごの筋肉など、役者はもっと細かい所に神経を使った方がいい。これは難しい芝居だ。奇想を支える現実感を、役者が受け持つのだ。ハルコ(木村佐都美)に好きではないといわれた交際相手(木内コギト)が見る見る青ざめていくときの、気の毒なほどのリアリティを、もっとほかのシーンでも感じられたらよかったと思う。手堅く演じられる姉(加藤記生)の泣き声は、最初と最後でもっと差があったほうがいいかもしれない。作中に登場する「椅子に腰かけるべからず」という不文律、というのが、最後まで腑に落ちなかったのであった。

いや、やろうとしていることはわかる。が、いかんせんどの役も難しすぎる。次作に期待。