熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ5周年記念 東京喜劇『船上のカナリアは陽気な不協和音~Don't stop singing~』

 「お客さんが面白いと思っているあたたかい拍手。テレビの人が出て来て面白いことをやってくれる喜び。」

 と、去年の熱海五郎一座第四弾を見て、手控えにそう書いてある。

 今年の熱海五郎一座、おっと思いました。贅肉が落ちてる。テレビの過去のネタが極端に少なくなり、いま、この場で、このお客さんを笑わせようとしてる。話はここから始まるべきだ。持ちネタなんていらない。ちゃんと笑わす技倆あるじゃん。芝居の途中でラサール石井が「それのどこが笑いにつながるんだ!」と半ば真面目に(って見えた)渡辺正行にいっていたが、なんか笑いの優先順位が恐ろしく高く、恐ろしく厳しくていい。この人たちには笑いが尊いのだ。面白かったのは一幕と二幕のつなぎ目と、あるスイッチを巡る東貴博小倉久寛のやりとりだった。

 筋はほとんど紹介できないが、ある豪華客船に乗り合わせた人々の物語だ。客の中には引退を宣言した演歌の大歌手迫芝千夜子(小林幸子)とその愛人、大臣の永田(渡辺正行)がいる。船にはジャズのビッグバンドがある。金管が13人、ベース、ピアノ、ドラムスで構成されていて、このドラムスを三宅裕司が務める。音が分厚い。ちょっと籠っている気もするけど、すてき。

 小林幸子は大劇場にちょうどいいサイズで芝居する。大仰に見えそうで、見えない。何より華がある。ジャズをうまいなあと思っていたら、持ち歌を一節うたい、あまりの輝きに瞠目した。後半の人情的やり取りはゆっくりすぎる。しかし、観客にあわせているのかもしれない。カーテンコールで観客にとてもサービスしていた。みんな満足していたと思う。丸山優子、白土直子がプロのコーラスがつとまるほど歌がうまいんだなって知りました。