シアタークリエ KERA CROSS #1 『フローズン・ビーチ』

ぽんぽんひゅるひゅる上がる花火のような会話、どこをとってもぱっと小さく火がつき、火薬が言葉を打ち上げて、金や銀の火花がきらきら海に散っていく。これ面白い話だね。初演1998年、21年たって再演したくなるのわかる。

 1987年の夏、海外のある島の広壮な別荘、その3階、らしきリビングと海を見晴らすバルコニーで、ひそひそと、おおっぴらに事件は起こる。この島で不動産開発を計画する父の娘愛(花乃まりあ)は幼馴染の千津(鈴木杏)を別荘に招く。千津は高校時代の同級生市子(ブルゾンちえみ)とともにやってきた。愛の双子の姉萌(花乃二役)、愛と萌の義母咲恵(シルビア・グラブ)、それぞれが微妙な感情を互いに持ち、乾いた殺意が交錯する。

 ケラリーノ・サンドロヴィッチの戯曲って、一際「譜」がはっきりあると思うのだが、それがうまく働いていない。セットが広すぎ、会話がうすくゆっくりで、畳み掛ける花火のスペクタクルがない。一人一人が遠く離れている。特に最初の千津の台詞、高低緩急遠近の「譜」がない。これとても難易度の高い台詞をぽーんと放り込んであり、鈴木杏はがんばって、リラックスして背中が触れるクッションや、美しい張地のソファの感触を伝えてくるが、「譜」が読めんことにはなあ。ブルゾンちえみは、ハートが強そうなのでいうが、この市子という女の「二枚底」な感じがわかっていない。声が一色でもいい。けど怖くない。花乃まりあはヘリコプターを見送る仕草がいい(ヘリコプター見える)が、やっぱり譜がだめ。その中でシルビア・グラブの台詞ががんがん打ちあがっていた。自分を客観視し、醒めてて、かつ面白い。ケラの芝居はすこし体温低く設定した方がいい。特にこの作品は。海がせり上がってくる。「いつかは皆死ぬ」諦念の中に、皆飛び込んでいくように見える。