2018-01-01から1年間の記事一覧

東京富士美術館 『長くつ下のピッピの世界展  リンドグレーンが描く北欧の暮らしと子どもたち 』

「『ピッピ』シリーズが人生を変えた、と語ってくれた人も大勢います。でもね、最高のお賞めの言葉は、あるときだれとも知れないご婦人が紙きれに書いてくれたことづてです。『暗鬱だった子ども時代を、輝かせてくださって、ありがとうございました』。これ…

る・ばる Vol.24 さよなら身終い公演 『蜜柑とユウウツ ――茨木のり子異聞―― 』

木造モルタルカンカンアパートに住んでた頃、夜中だったか、早朝だったか、友達がぽつりと言ったのだ、「私あんなに芝居が好きじゃないもん」。「あんなに」のところにる・ばるのどなたかの名前が入り、それはもう大昔のことだけど、今回劇場に来て茨木のり…

池袋芸術劇場 『贋作 桜の森の満開の下  坂口安吾作品集より』

「芸術の神は嫉妬深い」天才画家は机にそう書いていたが、毎晩紅燈の巷に出掛け、早くに死んだ。 坂口安吾と矢田津世子は、背中にその芸術の神をおのおの背負ったまま向かい合い、恋愛は5年かけて1ミリくらいしか進展せずに終わった。安吾はいい作品をたく…

明治座 『劇団創立80周年 梅沢富美男劇団特別公演』

「プレバトのおじさん」とかおもっていてごめんなさい。梅沢富美男凄かった。 二枚目で踊るとき、美女で登場するとき、 (なんなのこの人なんなのこの人なんなのこの人)という言葉が頭をくるくる回り、ちょっと思考停止した。 あの脱力、っていうかリラック…

新橋演舞場 『オセロー』

黒塗り?オセロー(中村芝翫)はムーア人で、一幕でさんざん見下されていて、二幕目、三幕目にそれが毒が回るように効いてくるというつくり。ということは、黒く塗らなくていいんじゃないの?一幕の蔑視が、とても鋭くよくできているし、なにより、オセロー…

彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール 『大塚直哉レクチャーコンサート J.S.バッハ⦅平均律クラヴィーア⦆の魅力 ~ポジティフ・オルガンvsチェンバロ その1~』

月~金朝6時からのNHKFM『古楽の楽しみ』を聴いてる以外、私とチェンバロの接点はない。 ――と、思っていたけど、よくよく思い返したら、一点だけありました。ホミリー(借り暮らしの)が、屋敷の客間のハープシコード(チェンバロのことね)のうしろの羽目…

ハイバイ15周年記念同時上演 『て』

「あれどうしたの、顔すっきりしているよ」昨日『夫婦』を見て帰宅すると、家族がそんなこと言ったのだ。すっきりしたーめっちゃすっきりした、自分の中の一部が成仏したみたいにすっきりした。今日はその前段、ばらばらになっている荒んだ家族が、もう一度…

ハイバイ15周年記念同時上演 『夫婦』

幸福な家庭は似通っているが、威張ってるお父さんというものは、もっと似通っている。 と、驚嘆の念でいっぱいになって家へ帰ってきた。どうしてあの人たちってローソクで勉強した街灯の下で勉強したって言いたがるのかしらねー。立派な仕事をしている/嫌な…

ブルーノート東京 矢野顕子トリオ featuring ウィル・リー&クリス・パーカー

オープントゥの靴を履いている女の人は、青山の街にも、ブルーノート東京にも、もうほとんどいない。8月下旬。秋だね。初めて一人で来たブルーノート、割といっぱいいっぱいです。 スタッフがピアノの前に譜(歌詞のようにも見えた)を置く。ピアノの中央の…

劇団青年座 第233回公演 『3組の夫婦による ぼたん雪が舞うとき』

原発から30㎞離れた町、地震で原発が壊れ、コンクリートの建物の中にいるようにという指示が出ている。夫(横堀悦夫)と妻(津田真澄)はほかに選択肢もないらしく、木造モルタル築30年の自宅の、いちばん奥まった子供部屋に避難する。夫は片耳が遠く、妻は…

渋谷クラブクアトロ 『FUJI ROCK AFTER PARTY ホットハウスフラワーズ special guest ウェスタン・キャラヴァン』

17年ぶりの来日。家族がよく聴いていて、それで私の分もチケットを取ってくれたわけだが、予習が足りなくてちょっとあおざめているのである。来たことあるって言われても全く覚えのない会場クラブクアトロ、真ん中にマイクが3本立ててあり、その両脇のスタン…

カクシンハンPOCKET08 『冬物語 ~現実と夢幻のデッド・ヒート~』

芝居を予約してチケットが郵送されてきた。チケットだけじゃない。「サイリウム」が入ってる。サイリウム=化学反応で蛍光色を発する器具の通称。psyllium。送られてきたのは片手を広げた長さのスティックであった。突然襲う黒い不安。①わすれる②時ならぬと…

オンワードpresents 新感線☆RS  『メタルマクベス disc 1』

ディストピア。2218年、廃墟と化した世界、そこにランダムスター(橋本さとし)と呼ばれる男がいる。彼はレスポール王(西岡徳馬)の配下、敵を蹴散らして手柄をたてる。バイクで道を急ぐランダムスターとエクスプローラー(橋本じゅん)の前に三人の魔…

帝国劇場 『ナイツ・テイル 騎士物語』

パンフレット2800円、見本を見てから、買うかどうするか決められるようになっている。ストレートプレイだと、宣伝チラシをもらう時キャスト表もくれるけど、そんなのはないんだね。 この『ナイツ・テール』というミュージカルは、シェイクスピアとジョン・フ…

シアタークリエ 『大人のけんかが終わるまで』

ヴィヴァルディがストーンズに割って入る。このヴィヴァルディが、岩からしみだしてるように悲しい。哀切。 愛人ボリス(北村有起哉)の車で素敵な高級レストランに出かけることになったアンドレア(鈴木京香)は、怒っている。「外で吸えよ」とボリスに言わ…

シネ・リーブル池袋 『エンジェルス・イン・アメリカ ~国家的テーマに関するゲイ・ファンタジア~ 《第一部》至福千年紀が近づく《第二部》ペレストロイカ

8時間(休憩こみ)。全く退屈しなかった。緊密なストーリー、笑える台詞、そして、考え抜かれた装置。「部屋」の枠取りにカラーの蛍光色の細い明かりが使われ、それは舞台の高さに比してとても低く見える。部屋は互い違いにまわるように組み合い、全体が奥へ…

東京芸術劇場 プレイハウス 『BOAT』

すだく虫の音。赤い緞帳が閉じられ、暗く襞を見せている。風向計が大きな投光器(上手の流木の間にある)に照らされて黒い影を襞の上に落とし、真ん中に青いボートが、横向きに丸太のコロに乗り上げているのが見える。虫の音だと思っているうち、途中でふと…

ポレポレ東中野 『乱世備忘 僕らの雨傘運動』

香港の普通選挙を求める雨傘運動について、つめたーい気持ちでいるのである。それはかつての若い自分を見ている気分だ。熱くなりやすく善悪の判断がはっきりしていて、しかもそれを口に出し、行動にすぐ移す。おかあさんに行っちゃいけませんと言われたら決…

ギャラリースペースしあん 『おちないリンゴ×さんらん公演 夏しばい』

坪内逍遥の婿さんが、「室内劇」というのに凝っていて、自分の屋敷で芝居をやっていた。というのを思い出す、築六十年の日本家屋での公演。飯塚友一郎(お婿さん)邸よりは狭いんだろうけど、十二畳(?)程の座敷に客席の雛壇が4段くらい組まれ、後ろの大型…

世田谷パブリックシアター 『マクガワン・トリロジー』

なにしてくれてんねん、と関西弁ネイティブのようにつぶやきながら、英語の戯曲をロビーで購入する。英語かい。 『マクガワン・トリロジー』の第一部「狂気のダンス」は本当に暴力的で(ステレオタイプではある)、自分が撃たれるような気がする。やだな。バ…

松竹新喜劇 劇団創立70周年記念公演 『人生双六』『峠の茶屋は大騒ぎ!!』

懐かしい昭和30年代風の、ほんわかしている音楽。たちまち目の裏にホンダのカブやらオート三輪が走り出し、つっかけの、買い物籠を提げた女たちが行きかう。なつかしー。 緞帳に青い明りがあたり、現れた舞台に青く雪が降っている。若い女が二人(前田絵美、…

ナイロン100°C 結成25周年公演第二弾 46th SESSION 『睾丸』

1968年よりあと、たぶん連合赤軍事件より前。知り合いの大学生とテレビを見ていた。大学紛争のニュースである。ヘルメットをかぶった学生が大学構内でシュプレヒコールを繰り返す。 「このとき〇〇ちゃんはなにをしていたの」 「見てた」 見てた。うーん。小…

シアターオーブ 『エビータ』

劇場につくと軍国主義――独裁政治を表わす怖い絵が舞台いっぱいにかかっている。人間の折り重なる塔、下は呻く裸の貧しい人たち、真ん中にサーベルや銃を構えた軍人が描かれ、一番上にはシルクハットの資本家や上流階級の人々がいる。軍人のひとりが塔の中心…

DDD青山クロスシアター 『フリーコミティッド』

上手隅にゆっくり暗くなりまた灯るクリスマスツリー。そこだけがさみしく片付いている。その他はすべてが乱雑に詰め込まれて、なんというか…喧しさを醸し出している。 舞台中央奥に黒板、きゃあきゃあいいながら(と感じる)メモ紙がマグネットでびっしり貼…

二兎社公演42 『ザ・空気ver.2 誰も書いてはならぬ』

最後にニュースを真剣に観たのは、オウム事件の時。あの時オウムの信者がテレビにでて、その「言い分を聞く」体裁の番組が随分あった。オウムは神戸の地震を、「地震兵器の仕業だ」としていたが、スタジオでそのことを追及されると、東大生のかわいい顔をし…

東京デスロック+第12言語演劇スタジオ 『カルメギ』

舞台を両側から挟む客席に向けてアーチが仕立てられていて、その真ん中の橋になったところに字幕が出る。ハングルと日本語。字幕を見上げていた目をそのまま舞台面に落とすと、そこはもう、「層になった」、処置なしの散らかりの乱雑な部屋、ハングルと日本…

さいたまネクスト・シアターゼロ 『ジハード ――Djihad―― 』

始まる前に配られた紙に、登場人物の辿った道の地図がある。 ブリュッセル―イスタンブール。イスタンブール―キリス―アレッポ―ダマスカス。なじみがあるようでないこれらの地名の中で、一つだけ、ぴかっと光って感じられるものがある。シリアのアレッポだ。市…

博多座 『六月博多座大歌舞伎』 (2018)

夜の部の最初は『俊寛』。静かに静かに緑と柿色と黒の定式幕が開くと、そこは一面水色の(浅黄)幕。上手の隅に房を垂らした見台が見える。竹本なんだなー。と、目で確認。隣に三味線。どどどんと太鼓の音、波にも風にも聴こえる。義太夫が鬼界が島であると…

吉祥寺シアター 『日本文学盛衰史』

紙の上に横たわる例えば森鷗外、夏目漱石などの文字が、空気を入れられ、初めはよろよろと、次にはスーツなどを着て、髭を生やして立ち上がる。私が感じ入ったのは「星野(河村竜也)さん」という人物で、この人きっと星野天知なんだけど、学校で習った符牒…

丸の内TOEI  『終わった人』

机の並ぶ広いオフィスの一隅に4,5人の人だかり、一人の男が紙袋を下げ、皆のあいさつを受けている。彼の名は田代荘介(舘ひろし)、今日で定年だ。荘介は別れの挨拶を受けながら、紙袋を持った方の手をあげて、眼鏡の位置を直す。ここ、よかった。無防備で…