2018-01-01から1年間の記事一覧

シアターコクーン・オンレパートリー2018 『ニンゲン御破算』

「吾胸の底のこゝには 言ひがたき秘密(ひめごと)住めり」っていうの思い出しました。心の底に頭蓋の奥に棲みつく、もう一人の私。 幕末。錦旗を押し立てた官軍と、彰義隊とが相争っている。そこへ割って入るお弁当売りの女お吉(多部未華子)は、官軍に入…

熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ5周年記念 東京喜劇『船上のカナリアは陽気な不協和音~Don't stop singing~』

「お客さんが面白いと思っているあたたかい拍手。テレビの人が出て来て面白いことをやってくれる喜び。」 と、去年の熱海五郎一座第四弾を見て、手控えにそう書いてある。 今年の熱海五郎一座、おっと思いました。贅肉が落ちてる。テレビの過去のネタが極端…

東京芸術劇場 シアターウェスト 『TVUstage2018 家族熱』

ひとまわりしか年の違わない、美しい継母朋子(ミムラ)。その継母を思いながら、今は彼女の出て行った田園調布の家に父と弟と住む医師の息子杉男(溝端淳平)。戻ってきた実母、祖父の死、様々な事件を挟んで、三年後、二人は祖父のお墓でばったり出会う。 …

恵比寿ガーデンシネマ 『29歳問題』

鏡を覗く度、まつげがみんな手を伸ばして、「タスケテ!」と言ってる気がしたあの頃、あの加齢不安、あれ30才くらいだったのかなあ。こういう時、いつも『風と共に去りぬ』の出産に関するスカーレットの言いぐさ、「いい具合に苦痛でぼやけて」っていうの思…

三越劇場 『新派百三十年 六月花形新派公演 黒蜥蜴 全美版』

なぜ突然着替えるの明智(喜多村緑郎)?とか、1ミリも考えない。 芝居が走っているからだ。その速度は、ジャック(市村新吾)の思い切ったツーブロックの髪や、一寸法師(喜多村一郎)の入念な青いメイクや立ち廻り、殴られてそっと鼻血を出す新聞記者郷田…

渋谷HUMAXシネマ 『犬ヶ島』

黒澤明(1910-1998)、『七人の侍』。子供の時に、テレビで初めて見たの。攻めてくる野武士、土砂降りの中の切りあい、三船敏郎の激しく鋭い身のこなし、宮口精二がむかっ腹を立てながら(と後年知った)横っ飛びに吹っ飛ばされる壮絶なシーン、こどもには…

唐組・第61回公演【唐組30周年記念公演第1弾】 『吸血姫』

どんなに遅い番号でも、10番台でないと嫌だったあの頃、最前列で、水やらなんやら浴びたり、突如舞台奥のセットが取り払われ、春や秋の冷たい空気がわっととびこんできて、クレーンだのなんだのでヒロインが飛び去ってしまうのを、握りしめた両手を拍手のた…

M&Oplays produce 『市ヶ尾の坂ーー伝説の虹の三兄弟ーー』』

時計がない家。近代のモダン和建築と、戦後すぐの住宅公庫で建てたような安普請が、ないまぜになってる不思議な家。思いつきのような畳の上のスツールとカウンターもある。しかし、下手手前のポトスの鉢を置いている小テーブルが、しっとりと落ち着いて、あ…

武蔵野スイングホール 『アンッティ・パーラネン』

真珠色の丸い釦が6つ3列、演奏者の左手側についていて、その向って左隣りに、小さな釦がいくつか見える。黒いアコーディオン。小さな釦の左は蛇腹、すこし開いている。開演前、何気なく舞台床面に置かれているのだ。だいじょうぶ?心配じゃない?なんとなく…

イキウメ 『図書館的人生Vol.4襲ってくるもの』

「き、斬れぬ」とかいうのである。頭の上に巨岩を想像して暮らす剣豪に対して。坂本竜馬だったかなあ。 あらゆる人の頭の上に、大きな黒い岩が浮かんでいる。それが落ちてくる。 三話のオムニバス。一話目、認知症になってしまった脳科学者山田不二夫(安井…

新国立劇場中劇場 『ヘンリー五世』

ザ・戦争。戦争のいろんな貌を、2時間50分(休憩20分)でぎゅっと圧縮して見せてくれる。「聖クリスピンの祭日の演説」っていう、戦い前のヘンリー五世の台詞が有名で、ほんとの戦争の前に上演されたりして、愛国心を鼓舞する芝居とも言われているが、鵜山仁…

PARCOプロデュース2018 『ハングマン HANGMEN』

キルケゴールって、教会の庭って意味。 とか、ちょっと言ってみたくなるほど、キルケゴールは遠い。イングランド北部オールダムも遠くパブも遠い。訛りはゆるく皆巧みに演じるが遠い。「いま、ここ」にいない。唯一信じられるのは十五歳の娘シャーリーを演じ…

ブルーノート東京 シルビア・ペレス・クルス

舞台に六つ、椅子が見える。満席のブルーノート。5月11日のNHK「あさイチ」に出ましたと、給仕係が後ろの席のお客さんに話している。 2分前。ひらっとバイオリンの音が一瞬聴こえる。会場が暗くなり、後方左側から、一列になって、ミュージシャンの入場。チ…

さいたまゴールド・シアター番外公演 『ワレワレのモロモロ ゴールド・シアター2018春』

「稽古で一度も台詞を正確に言えたことのない俳優が、本番で台詞を正しく言えるはずがない.そんな実例をぼくは知らない.したがって本日の配役は変更します」2015年4月6日蜷川幸雄、稽古場の蜷川さんの写真を一枚一枚眺めていたら突然、赤ペンで書かれた厳…

ビルボードライブ東京 スクイーズ 2018

めちゃ舞台近っ!今日はカジュアル席平場、ステージ側から順に、縦に4人掛け×2、6人掛け、8人掛けとテーブルが並び、8人掛けの端っこに座りました。席は前方から段々に詰まり、皆ビルボード東京の、招待券プレゼントアンケートに鉛筆で書き込みしている。 …

スーパーエキセントリックガールズ 『華 ~女達よ、散り際までも美しく~』

光琳の流水模様が階段状に大きく客席に迫ってき、金色の大小の水滴のような紙が貼りこまれ豪奢。舞台中央から小さな花弁がはらり、はらりと散り、黒い舞台に張り巡らされた下へ垂れるたくさんの赤いリボンと相俟ってきれい。 しかし私はうすいパンフレット「…

モダンスイマーズ 句読点三部作連続上演第一弾 『嗚呼いま、だから愛』

ブラインド、冷蔵庫、食器棚、シンク、キッチンカウンター、仕事机(仕事部屋)、ダイニング、和室の座卓、ダブルベッド、長方形に作られたセットの長辺の3列目に座り、目で装置を一つ一つ確認する。どこの家にもあるために、(自分ち?)と思うくらい既視感…

東京芸術劇場 プレイハウス 『酒と涙とジキルとハイド』

人間て不思議だと思わない?なんて、水色と白のバッスル(腰当)つきドレスを着たイヴ(優香)が淡々と語り始める。一番いいところを見せられるのは、緊張しないどうでもいい人で、好きな人にはなぜかそういうところが見せられない、云々。うーんそれは女の…

ヒンドゥー五千回 最終公演 『空観』

「むげんにびぜっしんに」(無眼耳鼻舌身意)、とひとりこそこそお経を唱えると、すごーく遠くへ来たような気分が来る。昔の人も、苦が多かったんだなーと思うのである。全てのものが空(くう)で、確かな実体など何もないんだよ。というところにたどり着い…

TOHOシネマズ日比谷 『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』

踏むと弾力を持って靴裏を押し返してくるあたらしいカーペット、3月29日にグランドオープンした日比谷ミッドタウンのTOHOシネマズ日比谷は、映画館にしては4階と高層でなく、ながい通路の大きな窓越しに、日比谷公園のもくもくと盛りあがる新緑の欅の群が見…

DDD青山クロスシアター 『Take Me Out 2018』

「あんな連中が、最前線へ行く。」家を建てるガタイのいい若者たちをみながら、サリンジャーがふと呟いたと、娘のメモワールに書いてあったと思うけど、言うても甲斐ないことながら、この日本版『Take Me Out』は、みんな体が小さい。いながらにして、暴力、…

カクシンハン第12回公演 『ハムレット』

彼岸と此岸。 上手の手前から、下手の奥に向かって、白黒のストライプが続いている。横断歩道、暗い下手奥に道しるべのような、死出の旅の伴をする蝶のような灯、舞台正面の壁は幕が取り払われて裸。下手から二筋の明かり(彼岸からの光)、濃いスモーク。ジ…

日生劇場 『リトル・ナイト・ミュージック』

「天下麻のごとく乱れ」という言葉が、ソンドハイムを聴いていると思い浮かぶ。難しい。乱れてる。その上に浮橋を架けるように旋律が載る。難しすぎて曲の姿がほとんど見えない。 舞台にはウォータン(神さまの)でも現れそうなシンプルな坂、天井から6つの…

東京芸術劇場 シアターウェスト『PHOTOGRAPH51』 

「掃除して!」 「うるせー」 というのが小学校の女子と男子のデフォルトの会話であったとすれば、まじの言い合いになりがちだった自分に比べて、スムーズに事を運んでいる女子を観察してほんとに驚いたものだった。目が全然違う。(怒ってないの、私かわい…

25YEARS ANNIVERSARY NYLON 100℃ 45th Session 『百年の秘密』

僕が月を見ると、月も僕を見る、という子供向けの詩があったように思うんだけど、客席に入って舞台を見ると、おなじような気持ちになるのだった。 屋敷の中に巨大な木。僕が木をみると、木も僕を見る。チェーホフの登場人物は100年後に思いをはせるけど、『…

Bunkamuraオーチャードホール 『マリア・パヘス&シディ・ラルビ・シェルカウィ DUNAS』

手拍子を打つ音、楽器の調子を取る音が、微かに聴こえる。ふつふつと呟くように、幕の後ろでバイオリンが鳴ってる。 煮えていく鍋を考える。ちいさな足拍子が、たたんと響く。 幕が開いた。上手と下手に客席に垂直に薄幕が張られ、それを上手は女性(マリア…

劇団青年座 第231公演 『砂塵のニケ』

青く暗いロゴが目立つオレンジの庇「青年座」。浮かれていた時もあった、めそめそ泣いてたこともある、何十年もいやってほど前を通ったけど、一度も入ったことがない劇場。今日はこの劇場の最終公演。 中は案外こじんまりとしていて、広くない。140席くらい?…

劇団民藝 『神と人とのあいだ 第二部 夏・南方のローマンス』

『神と人とのあいだ 第二部 夏・南方のローマンス』1970年。別役実の岸田戯曲賞受賞が1968年と知り、ふーんと思うのである。『夏・南方のローマンス』って、一度も役名で呼び合わないし、派手な服(赤いブラウスにグリーンのフレアスカート)の女(漫才師で…

劇団民藝 『神と人とのあいだ 第一部 審判』

「僕は大体、その時代にやる意味というフレーズは好きになれないんです。作品がよければいつの時代にも通じるものだと信じてるし、作品を時代風潮に捉われずに独立したものとして考えていきたい」(児玉庸策) 「木下作品の現代風な舞台化があってもいいとは…

ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人極 修羅天魔』 

極楽:しょせん歩むは修羅の道だよ! 言い切って歩き出す極楽(天海祐希)に、まるでカメラとして付き随うように、客席がともに動く。カメラは極楽の過去を振り返るのだが、徐々に彼女から離れ、いまの日本ではありえないほど広い曠野を極楽がひとり歩いてい…