新橋演舞場 東京喜劇 熱海五郎一座新橋演舞場シリーズ第8弾『任侠サーカス キズナたちの挽歌』

 前説の東貴博がほっそりしてハンサムなので、えっ、ふーんと驚くのだった。しかし話は低調で、大谷選手でなく小谷です、それはよくあるやつさ。東の説明する「花道を通ってもいいが台詞喋っちゃだめ、ただ通るだけ、『口パク』に音効つけます」っていう、新橋演舞場の苦渋の「コロナの決まり」が、一番シュールじゃん!となり、これが今日の芝居で最も笑えるとこだったらどうしよう、と思ったけど、大丈夫だった。そこを逆手にとって、最大限に笑いが起きていた。そして、今まで観た熱海五郎一座の中で、とても「おしばい」ぽい。内輪受けは無し、老人ばかりのやくざ熱海組は、若者に次代をつなぐべく、サーカス団の孤児木下大作(塚田僚一)を組長に据える。敵対する沼津組の組長珠鳥千華(浅野ゆう子)は、キャバレーを巡って熱海組と激しく抗争し、熱海組を呑み込もうと企む。熱海組の老人たち(三宅裕司ラサール石井小倉久寛)のぼけてるシーンが危なげなく、よくできてる。警部の星範人(春風亭昇太)は台詞も言わないのに得な役で、渡辺正行に至っては心変わりするいいシーンがある。頑張れ。芝居内の芝居(コント?)が、もっとタイトにならないとだめ。ガチャピンを話題にするとことか、白熱して「見せてる」。白熱が足らん。のろい。たぶん、舞台に立っている人と観ている人がしんどいのは、木下を組長にする説得シーンと母子の名乗りのシーンだと思う。ピンスポットでかっこよく抜いちゃいな!ここ、演出の出番じゃない?脚本が冗長だもん。元県知事(白土直子)ががんばるが、それでも最後しんみりしすぎなので、かっこよくしてほしい。浅野ゆう子、どの衣装も水際立って美しく、声がきちんと彫琢されてる。デザインされてる。一幕終わり、よく言った。塚田僚一、声をデザインしないと。まずそこから。甲高い声が頭に「抜けてる」。自分の声を知る。5連続ばく転凄かった。