新橋演舞場 新橋演舞場シリーズ第7弾 東京喜劇『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー ~日米爆笑保障条約~』

 「そんなんじゃないから俺たちの笑いは」

 これまで3回熱海五郎一座の芝居を観たけれど、今日のはこんな声が聞こえてきそう。まず、角ばった五輪マークのある持ち運び卓を、首から提げた外国語訛りの男が出てくる。スーツだ。演じるのは深沢邦之である。この人バッハ?コーツ?眼鏡をかけてないし訛りはとてもステレオタイプ。出演者の紹介をする。エッジィなところ、ほんとに行かないな。「そんなんじゃないから『笑い』ってものは」まじで声が聞こえるよ。四コマ漫画のような落ちで暗転し、暗転前はいつも面白い。けど、観ていて、この落ちが、「熱海五郎一座」より「新しい」。たったいま、息をしている。現代性がある。熱海五郎一座が平熱36,5℃だとすると、落ちは35,9℃くらい。演出は、平熱を下げるか巧くつなげるか、どっちにしろ「変わる」必要があるんじゃないの。

 日本が太平洋戦争に勝ったことになっているSF(?)で、アメリカの半分を日本が占領するという。日系アメリカ人がジャズバンドを組んでいて、国と国との策謀に巻き込まれる。荒唐無稽。第三稿くらいで(五稿まで作ったのだそうだ)やめとけばよかったのにねー。(これ、ヘイトじゃない?)という笑えない場面はなぜか五稿までしっかり生き残っている。丸山優子の演歌歌手は上出来だが、訛をもっと深堀りする必要がある。それは深沢邦之も同じ。ジャズの生演奏は、「発表会」みたいだった。見事やり遂げ、よかったねと見ている方も思うのだ。小倉久寛の「踏み絵」のシーンの身体性素晴らしい。紅ゆずる、物凄いポテンシャルのある人だが、締めるところを締めて。面白いことを「やりすぎない」。横山由依も無難に演じるが、「皆さん抵抗するのが怖いんです」の前にある間が長すぎ、客の私の方が怖かった。