新橋演舞場 熱海五郎一座新橋演舞場シリーズ第9弾 『幕末ドラゴン クセ強オンナと時をかけない男たち』

まず、「とにかく明るい安村 安心してください」で検索。そこからだよ。なんにも知らないんだもん私。イギリスの人と一緒。

 幕が開いてからの坂本龍馬東貴博)の台詞が、おりょう檀れい)のことを言っているのか、それともうっすらした未来の記憶なのか、現代からと過去からと、同時に縄をかけられているように見え、ここが、すごく面白かった。観客は暖かく、話を待ち受けてよく笑い、とても楽しんでいる。

 うーん。今回さ、吉高寿男(劇作)は、話をなだらかに一本につなげようとしたよね。自分の得意なひんやりした4コマまんがは封印し、とにかく流れを切らない。それは達成されているけど、面白さのクオリティは下がった。

 幕末にタイムスリップした劇団の隣理(となりおさむ=三宅裕司)に突然話を振られて何か言いだす五反田蓮(ごたんだれん=春風亭昇太)が、全然関係のない話をするところなどおもしろいが、呻吟する作家の姿のほうが強く感じられる。ゲストの檀れい玉井詩織ももいろクローバーZ)はよく働き、この芝居の中でキラッとしていたと思う。カーテンコールで体の線を出す美しいドレスと、風に揺れるすてきなワンピースで二人が登場すると、今まで観客を笑わせていた人たちが、急にひゅーっと遠くの星の住人のように見えた。

 熱海五郎一座、切所だな。長い公演のつかれ(病人による休演もあった)と、一座の加齢、これをどうするか。

 今回役得の東貴博と、すこし外した春風亭昇太がよく、それってきっと、年齢が行ってないってことだと思う。あ、三宅と小倉久寛の殺陣はなかなか決まっていたけど。でも、疲れてない?若い劇団の人はきちんと育っていて、殺陣は鮮やかだし、花道を遠慮するギャグは面白かった。野添義弘のしっかりした芝居もいい。しっかり芝居すればいいんじゃないかな。仁左衛門だって仲代達矢だって、すごいよ。でもこれ軽演劇なんだよねえ。むずかしいね。皆鍛錬して体を動かすか、若い人をどんどん起用していくか、ギャグが面白くなるか、どれかだね。吉高寿男、がんばれ。