新宿ピカデリー 『アンチャーテッド』

 ネイサン・ドレイク(トム・ホランド)という名前のドレイク船長の末裔が、マゼランの財宝を求め兄貴分サリー(マーク・ウォルバーグ)と世界を駆け巡る。

 もともとが「ゲーム」だからか、話も心理描写も粗く、かっこいい悪者の女の人がふたりも出てるのに、「仲間っぽいほう」(クロエ=ソフィア・テイラー・アリ)か「そうでないほう」(ブラドック=タティ・ガブリエル)かぐらいの区別しかない。宝はすぐ発見され、ネイサンは無敵。いちばんまずいのは、アントニオ・バンデラスが「げんきない」ってとこだ。アントニオ・バンデラス!自分の野望のためにあんな悪を働く者が、あんなに地味ってどういうことだ。脚本家はどうしてバンデラスにぱりっとした死を与えないの?中途半端だよ。

 この作品で最もいいのは、幕開けの10分、ゆっくりと宙を泳いでいる革ひもで結んだ指輪が、男の首に掛けられていることが分かり、数珠つなぎの荷物に足が引っ掛かっているのを観客が知るあたりだ。活劇!おもしろい!どうなる!とわくわくするが、ここ、結局二回語られる。あー。そうだよね。全体がこの出来だったら、インディ・ジョーンズに勝てたのにね。そして、も一ついいのは、トム・ホランドが体を張ってよく働いており(そして身体が利き)、台詞を言う時少し愛嬌があることだ。それは「いきなり」「なぜか」「都合よく」ネイサンを発見するマーク・ウォルバーグも同じ。愛嬌がある。

 ゲームや漫画の原作のファンが、映画になったり舞台になった作品を見て、その「再現性の高さ」に満足しているのを見かけると、とても違和感を感じる。ゲームだろうが漫画だろうが、世界を拡張していなかったら、作る意味ないよ。この作品特撮凄かった。続編が、もっと面白くなるといいけどね。