六本木トリコロールシアター ドラマ・リーディング 『それを言っちゃお終い』

芝居のぉ!足がぁ!みじかぁああい!凧のしっぽがなくてぐるぐるまわってる!景色が見えない!これフランスの芝居でしょ?フランス人てみんな試験ですごーく哲学的思考とか論理的展開を勉強するんじゃなかったっけ?「芝居の芯」を運ぶ足、凧に重さをつけて飛ばし遠くから眺める知性、その論理、理屈の持って行き方が、全然わかってなくて、うまく扱えてない。足長くして、優雅じゃないとさー。会話必死にしてもダメ、その間(かん)優美に足組んだりしてほしい(比喩です)。余裕がない。12景のうち、二つ目の「最初の夜」——HIVをめぐる会話——と、三つ目の「ほのめかし」がまずい。この芝居を、空の高いところから眺める目が足らないのだ。一つ目の「ケーキ」、二つ目、三つ目と、坂東巳之助が何者なのかがわからなかった。ゲイカップル?不倫カップル?フランス婚?この話の中で最も面白いパソコンの履歴を見せるかどうか言いあいになる「履歴」で、巳之助はやっときれいな年配の女優の妻に見えてくる。ぱさぱさの「ケーキ」と最後の「家族の秘密」は対になっていて、重い秘密を相対化する。だから見知らぬ男が訪れる「幽霊」はけっこう大事なポイントだ。平田広明のさりげないリアクションに、かすかに「マジ」がないと。

 「最初の夜」は平田広明坂東巳之助ともに腑に落ちてなくて、客席を説得できない。客席が理解できるように、もっと「足を長く」、「凧にしっぽをつけて」、意味を観客に張り付けてほしい。遠くから見る。「ほのめかし」は巳之助の責任である。すべてを夫に頼っている妻の屈辱が、理解できてないようだった。「女が自分の体を自由にする権利」って、「私の身体は私のもの」ってことだよ。もっと丁寧に発音しないと耳を素通りして宙に浮いてしまう。そして、この権利に反対する女の人って、まあいない。そこだいじだけど、あんまりわかってないみたい。だから「イスラムのスカーフ」に意見がないのが、皮肉なのではないですか。